介護離職しないために、早めに親の介護の職場相談を|介護支援制度のフル活用も

介護の備え・知識

シリーズ「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」を終えた後、日経掲載の介護離職関連記事を参考に、以下の2つの記事を投稿しました。

今回は、それに続いて、先日9月21日に同様掲載された
⇒ 親の介護、早めに職場相談  制度をフル活用し離職せず – 日本経済新聞 (nikkei.com)
を参考に、同様、仕事と介護の両立と介護離職問題について考えてみたいと思います。

親の介護が必要になったとき、働き方をどうするか。
働くケアラーや介護離職について詳しい専門家や企業の担当者の意見を紹介し、事前の心構えや情報収集の重要性を強調、勤務先とコミュニケーションをとって介護と仕事の両立を図るようこの記事では勧めています。
以下、ポイントを要約しつつ、若干のコメントも添えました。

長い介護期間
「育児と異なり、いつまで続くのか分からないのが介護」で、親の介護は長期にわたる可能性が高い。
介護期間は平均5年1カ月に及び、4年以上の人が半数を占める。(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査:2021年度」
「だからこそ続けられる介護と働き方を考えてほしい」と労働政策研究・研修機構池田心豪・副統括研究員は助言。

親世代・子世代間の介護意識ギャップ
ある企業が6月に実施の「親世代には自身に、子世代には親に介護が必要になった時に望む介護方法」調査によると、両世代とも「外部施設を利用した介護」が約6割を占める一方、「家族・親族による介護」は親世代で26%に対して、子世代では54%と「少しでも親の介護をしたい」と考える子世代が多かった。
この情報だけでは評価・判断は難しいですね。
双方の世代の年齢と就労状況・家族家庭状況などがまったく無視されているので、そのままの結果だけでどうこう言うことには無理があります。
また複数回答方式であることで、結果自体が相対的であいまいさが大きいことになります。

介護休業・介護休暇の有効活用
「今の法律は働くケアラーが介護に専念するのではなく、なるべく仕事を続けつつ介護にあたることを想定している」(先述池田氏)ため、介護負担が大きくなると、仕事の継続が難しくなる。
介護休業法の「介護休業」は通算93日まで、3回まで分割して取得でき、「介護休暇」は年5日、時間単位で取得することを認めている。
こうした制度を前提として、地域包括支援センターやケアマネジャーなどと調整し、介護する人・される人に合った介護体制を築くべく計画化し、また介護が始まった後の手続きや面談などに充てることなどに活用する。
このように「長期間連続して休むのではなく、必要なタイミングに細切れに休んで対応できるようになっている」(池田氏)

社内外の介護相談窓口の活用を
働き手である自分の立場や親の介護事情等に沿った助言を得るために、社内外の介護相談窓口の活用を勧めている。
企業サイドでは、「介護が始まりそうな段階から、公的介護保険のサービスや勤務先の支援制度などを知っておくべき」「面談時などに親の状況について上司に伝え、日ごろから理解を得ていくことも大事」と助言するとともに、40歳前後の社員向けにもセミナーを開き、早期からの啓発にも力を入れている。
法律が定める残業免除や時間外労働の制限に加え、短時間勤務やフレックス勤務、介護理由の勤務地変更などを認める企業もあり、例えば「勤務時間を前倒しして夕食時に親の家に立ち寄る」など、柔軟な対応が可能になる。

仕事と介護をムリなく両立させるための心構え
親子関係は情緒的になりがちだ。介護生活は気持ちが浮き沈みし、疲れもたまりやすい。だからこそ「介護にクールでドライに取り組むことで、バランス感覚を保てる」(池田氏)。長く続けてきた仕事を手放さないことは、自分を保つ一助になり得る。
ただその心の持ちようを支えるのが、冒頭述べた、事前の心構えや情報収集の重要性を強調し、勤務先とコミュニケーションをとることにあるわけで、企業だけでなく、働く人自身行動に大きく拠ることを敢えて強調しておきたいと思います。
日経が取り上げたように種々利用や相談ができる企業などに働く方々がすべてではなく、より多くの方々が、そうした働き方ができず、働かせる基盤を持たない現実もあるからです。
そのためにも、すべての方々に「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズをお読み頂きたいと思います。

ワーク&ケアバランス研究所の和氣美枝代表の以下のアドバイスを添えています。
社員は人事に影響が出ると考え、介護の事情を話しにくいこともあるため、
「会社側も上司が定期面談で『出産や育児、介護、病気、転勤など家族のことで気になることはありますか?』というように部下に質問し、話しやすい環境をつくる」。
介護休業中に職場に迷惑をかけることに負い目を感じ、復帰へのモチベーションが下がる人もいて
「介護休業の目的や、働く人に企業が期待していることを取得の際にきちんと話すことが大切」と。
(参考) ⇒ 孤立しない環境不可欠  – 日本経済新聞 (nikkei.com)

なお、和氣美枝代表の著書を紹介した記事を、シリーズ「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」の中で、投稿しています。
参考にして頂ければと思います。

やはり、前2回同様、体系的に展開した「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズで、同様の課題を取り上げており、それぞれの記事をお読み頂くことをお薦めしたいと感じました。
但し、今回も含め、シリーズの個々の記事において不足している内容、その中に付け加えるべき内容がありましたので、随時、過去記事をリライトしていきたいと考えています。
参考までに、以下にシリーズ記事リストを掲載しましたので、関心をお持ち頂けた記事についてそのリンクから確認頂ければと思います。

1章 介護離職とは?その現状と原因
 1-1:介護離職の定義と現状
 1-2:介護離職の主な原因と影響
 1-3:増加を続ける介護離職の背景と対策
2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止
 2-1:介護保険制度の基本情報と手続き
 2-2:要介護度認定と介護サービスの違い
 2-3:在宅看護と介護保険外サービスの活用法
 2-4:介護にかかる費用と負担軽減の方法
 2-5:介護サービスの具体的内容と費用計算の基本
3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
 3-1: 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
 3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係つくり
 3-3: 在宅介護のメリットとデメリット
 3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り
 3-5: 介護の場所・方法の選択と介護離職防止対策
4章 自治体と地域の支援制度を理解し活用する
 4-1: 自治体の介護関連支援制度と担当部署
 4-2: 自身の自治体の介護支援制度と活用方法調べ
 4-3: 地域包括支援センターの役割と利用方法
 4-4: 介護制度を利用するための地域情報の事前調査と対策
5章 仕事と介護の両立を支援する制度を理解し活用する
 5-1: 育児・介護休業法とその基本ポイント
 5-2: 介護休業制度と介護休業給付金の活用法
 5-3: 介護休暇と短時間勤務制度の特徴と利用方法
 5-4: 職場の理解とサポートの重要性
6章 企業による介護離職防止策の取り組みと活用
 6-1: 企業が提供する介護支援策とその実際の運用
 6-2: 職場環境の整備と労働時間の柔軟な設定
7章 家族との介護協力と介護離職防止対策
 7-1: 家族間の協力とコミュニケーション、役割分担とメンタルケア
 7-2: 介護休業と介護休暇の適切な活用法
 7-3: ケアプランとデイサービスの利用と介護分担方法
 7-4: 他に家族がいない場合の適切な対応方法
8章 介護離職防止を想定しての介護の事前準備・計画と相談
 8-1: 介護に必要な情報収集と地域包括支援センター、相談サービスの利用法
 8-2: 介護体制の整備・見直しと緊急時対策
 8-3: 介護方法の基礎知識・技術の理解と必須習得事項
9章 万一の介護離職後の再就職・転職とキャリア構築
 9-1: 介護離職の経験とその影響を振り返る
 9-2: 介護離職後の再就職活動 – 成功に向けたアプローチと実践的アドバイス
終章 シリーズ総括
 補論-1:和氣美枝氏著『介護離職しない、させない』から
 補論-2:樋口恵子氏著『その介護離職、おまちなさい』から
 最終稿:シリーズ総括と今後の展望

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