• トピックス
  • シリーズ記事以外のマスコミ記事を基にした記事、管理者自身の考えや提案などの記事をこのカテゴリーに設定しています。

企業必読!介護離職防止対策|介護離職が日常化する介護クライシス対策、5つの提案

前回は、今年4月11日と18日2回にわたって日経に掲載された、
介護離職、50代が最多 将来の年金に影響も 介護と仕事の両立(上) – 日本経済新聞 (nikkei.com)
介護休業93日の使い方 休暇や短時間勤務も 介護と仕事の両立(下) – 日本経済新聞 (nikkei.com) 
2つの記事を参考にして、以下の記事を投稿しました。

今回は、それに続いて、4月13日付で同じく日経に掲載された「職場に迫る介護クライシス」と題した日経編集委員による記事を参考に、介護離職と介護と仕事の両立について別の視点から考えてみたいと思います。
⇒ 職場に迫る介護クライシス  :日本経済新聞 (nikkei.com) (2024/4/13)

初めに、その記事を要約すると以下になります。

背景

東京都在住で某企業で働く51歳の男性Aさんは、遠く離れた実家で暮らす高齢の両親の介護に不安を抱えています。父は体力が低下し、母は高齢のため、現状「老老介護」状態にあり、近い将来の介護に備えたい気持ちはあるものの、具体的な準備ができていない状況です。Aさんのように、介護リスクを抱えるビジネスケアラー予備軍が増加し、日本企業は対応を迫られています。

介護クライシスの拡大

日本では団塊世代が後期高齢者となり、親の介護が必要なビジネスケアラーが急増しています。
要介護認定者の割合は65~74歳では約3%だが、75歳以上になると約23%に跳ね上がる。約580万人の団塊世代の後期高齢者化により、20年に約655万人だった要介護認定者は、30年には約900万人まで増える。
伴ってビジネスケアラーも318万人になる見込みで、親の介護で仕事を続けられなくなる従業員が続出し、職場が機能不全に陥ってしまう「介護クライシス」に直面することになる。
企業の人手不足に一段と拍車をかけ、生産性低下を招く大きな危機が目前に迫っているわけだ。
団塊ジュニア世代の多くがいま50歳代前半にあり、多くの企業で管理職の立場にもあるため、この層の介護離職が経営上大きな影響を与えることは容易に想像できる。

ビジネスケアラーが招く生産性低下

介護関連コンサルティングを手掛けるチェンジウェーブグループの調査によると、従業員の27.8%が今後2〜3年以内に介護が必要になるリスクを抱えており、すでに介護を両立しているケアラーと合わせると、従業員の半数以上が何らかの介護負担を抱えているという。
介護に関する知識不足が多く、適切な支援策が整っていないことで企業と従業員の負担が増大。
結果、介護への対応が業務遅延や目標未達に繋がるなど、両立社員の生産性低下を招く影響が甚大と指摘。
経産省もビジネスケアラー発生による経済損失が30年に約9.1兆円に上ると推計しているが、大半がその影響とする。

企業の取り組みと支援事例|「仕事と介護を両立して当たり前に働ける組織」をめざすハウス食品グループ

ハウス食品グループは、2020年に両立支援策を経営計画に位置付けて導入。
親の年齢など一定のデータを入力すると介護リスクの切迫度や想定される負担の重さを判定できるセルフチェックシステムや三者面談を導入しており、介護に関する行動フローチャートや、活用できる制度・サービスの情報を提供している。その結果社員の介護知識が十分な場合、両立の準備にかかる時間が短縮され、仕事への影響も軽減できることが示されている。
この点については、チェンジウェーブグループも指摘しており、先述した経済損失は、介護保険や食事の宅配、見守りなど保険外のサービス活用等で縮小できるが、実際は「介護に関する知識や情報の不足で対応が後手に回ってしまう」という。

キャリア継続を希望するビジネスケアラーと隠れケアラー化

また、労働政策研究・研修機構の調査では、ビジネスケアラーの8割が介護に専念せず、仕事を続けたいと希望していることが明らかになっている。
しかし、自身のキャリアに響くことを警戒して介護休業や時短勤務などの社内制度を申請しない「隠れケアラー」も少なくない。介護は本人から報告がない限りは会社が状況を把握するすべがない。

企業が求められる支援の再考

しかし、本人からの報告がない限り状況を把握するすべがないという言い訳はもう効かない、聞けない状況に至っているといえよう。
また、現在の支援制度は「休むこと」を前提にしているものが多く、仕事を継続したいケアラーとのミスマッチが発生しており、それを埋める工夫が求められている。
企業は介護支援を単なる福利厚生ではなく、組織の生産性を維持する経営戦略の一環として捉える必要があります。適切な支援と知識の普及が、企業と従業員双方の負担を軽減し、持続可能な働き方を実現する鍵となります。

----------------------------------

以上が、多少の意訳・解釈を含む、日経記事の要約になります。
こうした常に経営サイドの視点から、生産性の低下や、人材消失リスクに焦点を当てた日経の主張には、いつも違和感を持つのですが、働くサイドの視点から、以下、問題提起と提案を行います。

1)介護担当部署の設置と明確化

当サイトで既に終えている、「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」というシリーズで、「介護離職」を防止する上で必要かつ有効と思われる情報収集や具体的な行動方法について、体系的に提示提案してきています。
(下記、シリーズ記事リスト参照)
こうした体系的な介護に関する情報提供や社内研修活動を推進する専門部署の設置と明確化から、すべての企業は始めることを提案します。

2)従業員の家族介護ニーズ申告調査の実施と介護ニーズ情報データベースの整備

家族介護ニーズ申告調査」は、一種の自己申告制度で、家族介護の必要性について、1年方は2年に1回程度で、所定申告用紙に記入提出を求めます。
記入項目をデザインするのも、担当部署の役割であり、そのデータは、人事データの一つの区分データとしてデータベース化します。

3)介護関連情報体系及び介護研修カリキュラム・介護研修計画の立案・実施

介護関連情報の軸になるのは、介護保険法、介護休業制度及び介護保険制度です。
それに、当然自社・自組織独自の介護支援制度が加わります。
社内講師・社外講師を組み合わせることも検討課題となります。

4)介護相談制度の整備と相談受付担当部署の公開と相談業務の開始・実施

従業員が、家族介護のための介護休業制度・休暇制度の取得方法や、種々の悩み・不安に関する相談を不安なく受けることができる組織体制を整備し、その支援を行うことを社会告知します。

5)上司管理職研修、役員研修の実施と自社介護支援制度の拡充への取り組み

従業員が不安なく介護について相談でき、かつ必要に応じて所属する組織の上長に相談できるよう、管理職および役員の心構えと実際の対応、組織としての対応方法などについて検討する研修を定例化します。
また、管理職や役員に対して、自社の介護支援制度の拡充と介護離職防止に関する取り組みを奨励することも、担当部署の重要な役割になります。

このように提案しましたが、現実を厳しく考えると、こうした取り組みができない中小零細企業や、無関係な自営業者の方々が非常に多くいらっしゃることも一方でしっかり認識し、併せて考え、提案すべきことも理解しています。
継続して取り組んでいきたいと考えています。
そうしたハンデを持つ方々にも、下記の記事シリーズに参考になる内容もいくつかあると思います。
特に介護保険制度についてや地域包括支援センターなど、身近な、入手可能な情報などについては、すべての方々に共通の課題ですので、ぜひチェックして頂ければと思います。

万一介護離職に至った場合、あるいは介護離職を真剣に考えざるを得なくなった時に。
親や配偶者の介護のために介護離職を余儀なくされた場合には、雇用保険の給付金を受けとることができるんです。
こちらの記事を参考に。
⇒ 親や配偶者のための介護離職の場合「特定理由離職者」として早期に失業手当を受給できます – 介護終活.com

1章 介護離職とは?その現状と原因
 1-1:介護離職の定義と現状
 1-2:介護離職の主な原因と影響
 1-3:増加を続ける介護離職の背景と対策
2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止
 2-1:介護保険制度の基本情報と手続き
 2-2:要介護度認定と介護サービスの違い
 2-3:在宅看護と介護保険外サービスの活用法
 2-4:介護にかかる費用と負担軽減の方法
 2-5:介護サービスの具体的内容と費用計算の基本
3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
 3-1: 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
 3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係つくり
 3-3: 在宅介護のメリットとデメリット
 3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り
 3-5: 介護の場所・方法の選択と介護離職防止対策
4章 自治体と地域の支援制度を理解し活用する
 4-1: 自治体の介護関連支援制度と担当部署
 4-2: 自身の自治体の介護支援制度と活用方法調べ
 4-3: 地域包括支援センターの役割と利用方法
 4-4: 介護制度を利用するための地域情報の事前調査と対策
5章 仕事と介護の両立を支援する制度を理解し活用する
 5-1: 育児・介護休業法とその基本ポイント
 5-2: 介護休業制度と介護休業給付金の活用法
 5-3: 介護休暇と短時間勤務制度の特徴と利用方法
 5-4: 職場の理解とサポートの重要性
6章 企業による介護離職防止策の取り組みと活用
 6-1: 企業が提供する介護支援策とその実際の運用
 6-2: 職場環境の整備と労働時間の柔軟な設定
7章 家族との介護協力と介護離職防止対策
 7-1: 家族間の協力とコミュニケーション、役割分担とメンタルケア
 7-2: 介護休業と介護休暇の適切な活用法
 7-3: ケアプランとデイサービスの利用と介護分担方法
 7-4: 他に家族がいない場合の適切な対応方法
8章 介護離職防止を想定しての介護の事前準備・計画と相談
 8-1: 介護に必要な情報収集と地域包括支援センター、相談サービスの利用法
 8-2: 介護体制の整備・見直しと緊急時対策
 8-3: 介護方法の基礎知識・技術の理解と必須習得事項
9章 万一の介護離職後の再就職・転職とキャリア構築
 9-1: 介護離職の経験とその影響を振り返る
 9-2: 介護離職後の再就職活動 – 成功に向けたアプローチと実践的アドバイス
終章 シリーズ総括
 補論-1:和氣美枝氏著『介護離職しない、させない』から
 補論-2:樋口恵子氏著『その介護離職、おまちなさい』から
 最終稿:シリーズ総括と今後の展望

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。