敬老の日が、警老の日に!|高齢者はより働き、より負担せよ!という政府

高齢者生活

9月16日敬老に日に因んで、ここ数年総務省が定例的に公表している65歳以上の高齢者に関する統計。
昨日15日発表の15日時点の人口推計によると、65歳以上の高齢者人口は前年比2万人増の3625万人と過去最多に。
総人口に占める割合は前年比0.2ポイント上昇の29.3%で同様過去最高を記録。

年齢階級別に詳しくみると、
・70歳以上人口は2898万人(総人口の23.4%)で、前年比9万人増(0.2ポイントアップ)
・75歳以上人口は2076万人(同16.8%)で、前年比71万人増(同0.7Pup)
・80歳以上人口は1290万人(同10.4%)で、前年比31万人増(同0.3Pup)

下のグラフでは、2045年までの予想も盛り込まれています。
来年3月末までに、団塊最後の年代年齢高齢者が全員後期高齢者になっています。
それに伴って、5年毎の予想では総数の増加はもちろん、80歳以上高齢者の増数が、いうならば半端ないです。
その見通しもあっての、現在65歳以上高齢者の就業促進策が喧伝される事情・状況が、次の「高齢社会対策大綱」に繋がっていきます。


65歳以上人口の割合は日本が世界で突出しており、人口10万人以上の200カ国・地域で日本が首位に立っている。

今回は、国際比は、主要テーマではないので、これだけにとどめます。

高齢者数のデータについては、総務省のこちらの資料で確認できます。
⇒ 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで- (stat.go.jp)

次は、高齢者の就業状況について、敬老の日に向けて公開された、同じ総務省統計トピックスによる資料から見てみます。

2023年の65歳以上の就業者数は、20年連続増加し、22年比2万人増の914万人。
高齢者の就業率は25.2%で、65~69歳に限れば52%と2人に1人が働いている。
定年延長企業の増加がこれを後押ししており、高齢者の働き手が人手不足を補う傾向が顕著になってきている。

23年の就業者数のなかの働く高齢者の割合は13.5%だった。就業者の7人に1人を高齢者が占める。
年齢別就業率は60~64歳74%、70~74歳34%、後期高齢者75歳以上は11.4%と上昇し、過去最高に。

65歳以上の就業者のうち、役員を除く雇用者を雇用形態別にみると、非正規の職員・従業員が76.8%を占めた。
働き手と期待はされても、現実的には減少する労働人口の補完機能として、非正規雇用主体の雇用形態が多くを占めており、定年延長や雇用契約延長の多くは、契約社員・嘱託社員を含む非正規であることも容易に想像でき、これからもその傾向は強まるだろう。

産業別の就業者数順では、トップが「卸売業、小売業」が132万人、次いで「医療、福祉」107万人、「サービス業」104万人と続く。
中でも、「医療、福祉」従事の高齢者数の増加が顕著で、2013年以降の10年間で約2.4倍となっている。
高齢者医療・介護を高齢者が支える構図がイメージできます。

詳しくは、こちらで確認頂けます。
⇒ 統計トピックスNo.142 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで- (stat.go.jp)

高齢者の就業者数の増加を報じた内容は、高齢者はもっと働くべきという政府の圧力を示す効果をもたらすものと想定されるもの。
これに先立って、9月13日の閣議で決定したと報じた、2018年以来6年ぶりの「高齢社会対策大綱」改定版。
その内容は、先述した高齢者の就業率の向上傾向と口裏を合わせたような内容を含むもの。
その目次を以下に転載しました。
詳しい内容は、こちらで見て頂けます。
⇒ 高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)本文 (cao.go.jp) 

【高齢社会対策大綱】目次
<第1 目的及び基本的考え方>
1 大綱策定の目的
2 基本的考え方
 (1) 年齢に関わりなく希望に応じて活躍し続けられる経済社会の構築
 (2) 一人暮らしの高齢者の増加等の環境変化に適切に対応し、多世代が共に安心して暮らせる社会の構築
 (3) 加齢に伴う身体機能・認知機能の変化に対応したきめ細かな施策展開・社会システムの構築

<第2 分野別の基本的施策>
1 就業・所得
 (1) 年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境の整備
  ① 高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリングの推進
  ② 企業等における高齢期の就業の促進
  ③ 高齢期のニーズに応じた多様な就業等の機会の提供

 (2) 公的年金制度の安定的運営
 (3) 高齢期に向けた資産形成等の支援
2 健康・福祉
 (1) 健康づくりの総合的推進
  ① 生涯にわたる健康づくりの推進
  ② 介護予防の推進
 (2) 持続可能な介護保険制度と介護サービスの充実
  ① 地域包括ケアシステム構築の深化・推進
  ② 必要な介護サービスの確保
  ③ 介護サービスの質の向上
  ④ 仕事と介護の両立支援
 (3) 持続可能な高齢者医療制度の運営

 (4) 認知症施策の総合的かつ計画的な推進
 (5) がん対策の推進
 (6) 人生の最終段階における医療・ケアの体制整備
 (7) 身寄りのない高齢者への支援
 (8) 支援を必要とする高齢者等を地域で支える仕組みづくりの促進
 (9) 加齢による難聴等への対応
3 学習・社会参加
 (1) 加齢に関する理解の促進
 (2) 高齢期の生活に資する学びの推進
  ① デジタル等のテクノロジーに関する学びの推進
  ② 社会保障教育及び金融経済教育の推進
  ③ 消費者教育の推進
  ④ 身近な場やオンラインでの学習機会の充実
 (3) 地域における社会参加活動の促進
  ① 多世代による社会参加活動の促進
  ② 地域住民を支援する専門人材・団体の活動基盤の整備
4 生活環境
 (1) 豊かで安定した住生活の確保
  ① 居住支援の充実
  ② 空き家対策の推進
  ③ 安全・安心で快適な住生活と循環型住宅市場の実現
 (2) 高齢社会に適したまちづくりの総合的推進
  ① 地域における移動手段の確保
  ② 多世代に配慮したまちづくりの総合的推進
  ③ 農山漁村のコミュニティの維持
 (3) 金融経済活動における支援
 (4) 消費者被害の防止
 (5) 認知機能の変化に応じた交通安全対策
 (6) 情報アクセシビリティの確保
 (7) 公共交通機関や建築物等のバリアフリー化
 (8) 高齢期の特性に配慮した防災・防犯対策
  ① 防災施策の推進
  ② 犯罪、悪質商法、人権侵害等からの保護
 (9) 成年後見制度の利用促進
5 研究開発・国際展開等
 (1) 高齢社会に資する研究開発等の推進
  ① 高齢者等のサポートに係る技術の開発や社会実装等の推進
  ② 高齢期にかかりやすい疾病等及び健康増進に関する研究開発等
  ③ 高齢社会対策の総合的な推進のための調査分析・データ等の利活用
 (2) 健康・医療産業の国際展開及び国際社会への知見等の発信
  ① 健康・医療産業の国際展開
  ② 国際社会への知見等の発信
<第3 推進体制等>
1 推進体制
2 推進に当たっての留意事項
3 大綱の見直し
(別表)数値目標及び参照指標


その中では、75歳以上の後期高齢者のうち、医療費を3割自己負担する「現役並み」所得の対象拡大に向けて「検討を進める」と明記しています。
また、働く高齢者の年金額を減らす在職老齢年金の見直しを含めて「働き方に中立的な年金制度の構築」にも触れた。
「働き方に中立的な年金制度」などと回りくどい、遠回しな表現ですが、要するに、もっと高齢者に働いてもらいたいのだが、その働く意欲をなくさせるような現状の在職年金制度を見直すための言い訳を、そのように表現しているだけのこと。
これらの高齢社会対策大綱の主な要点を抽出したのが以下です。

・後期高齢者の医療費、窓口3割負担の対象者拡大に向けた判断基準を議論
・在職老齢年金を含めた働き方に中立的な年金制度の構築
・2029年の就業率を60~64歳は79%、65歳~69歳は57%に
・企業における70歳までの就業確保措置の実施率を29年に40%に
・個人の働き方に合わせたジョブマッチングの仕組みを構築

この重点ポイントは、ご丁寧に上記大綱資料の中に以下のように示されているのです。

この要点をさらに簡潔に解釈すると、
「高齢者には、年齢に関係なく働けるだけ働いてもらい、年金支給時期はできるだけ遅らせ、できれば年金収入は減らし、年金保険料や医療保険、介護保険料や医療費の自己負担を増やし、そうすることで現役世代の保険料負担増を抑制し、国の社会保障費負担増も抑制し、財政悪化を抑制する、という政策を、高齢社会対策(大綱)として国は推し進める」
ということになりますか。(全然簡潔になっていませんね。)
高齢者対策ではなくて、高齢化社会対策、社会対策なのです。
高齢者対策ならば、高齢者にとってプラスになる政策を打ち出すのが常套のはずですが、それでは社会にとってプラスにならないという判断なので、こういう政策名称が用いられているわけです(か?)。

敬老の日に、警鐘を鳴らす、警告を発する。
もっと働かなきゃいけませんよ、もっと勉強してスキルを身につけてくださいね!
年金をもらう時期を遅くしてもらいたいので、そのためには働いて稼いでもらわなくては!
稼いで年金保険料を払ってほしいし、介護保険料も増えていくので、やっぱり働いてもらうべき!
現役世代の負担を増やすと彼らの将来が不安になるので、働ける高齢者には、やはり働いてもらうべきでしょ!
こうした警鐘、警告をそれとなく伝えるのが、敬老の日=警老の日の定例・定型行事、定点業務。
どうやら当分、敬老の日がそんな日になるのでしょうね。

この課題。
少子かも含めて、高齢化社会問題は、20年、30年前から予想され、対策が必要とされていたもの。
未だに、どんどん制度が悪化していく状況は、政治と行政の無策が招いたもの。
自民党総裁選や立民代表選など政治的行事だけは、その時だけのゲーム。
ゲーム参加は無意味だし、自衛するにも有効な手立てがない見いだせないのがなんともむなしいものです。
でも、何とか前向きに、楽しく生きていくことも高齢者の知恵と工夫で。


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