自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー12

介護の備え・知識

「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズを始めています。
「第1章 介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう」、「第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止」の2つの章を終え、現在は「第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止」
第3章は、次の5つのテーマで進めています。
1.介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
2.介護専門職の役割と選び方、関係づくり
3.在宅介護のメリットとデメリット
4.自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り
5.介護の場所の選択・方法の選択と介護離職防止対策

今回は、4回目「自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り」がテーマです。

結城康博氏の『在宅介護』では、「第4章 在宅介護サービスの使い方」「第5章 施設と在宅介護」「第6章 医療と介護は表裏一体」などで、在宅介護サービスと外部施設介護サービスの活用方法も解説されています。
これらのサービスの適切な組み合わせや利用方法を理解することは、介護者にとって非常に重要です。
以下では、それぞれのサービスの具体的な内容を紹介し、どのように活用するかを整理しています。

1) 在宅介護サービスの使い方

在宅介護サービスは、介護を必要とする高齢者が自宅でできる限り長く安心して生活できるよう、様々なサポートを提供するものです。以下では、代表的な在宅介護サービスの内容を説明し、それぞれの役割や効果について整理します。
訪問介護: 日常生活の援助、身体介護、医療的ケアなどを含むサービスです。訪問介護員が家庭を訪れ、日常生活を支援することで、介護者の負担を軽減します。家庭内でのケアが可能で、特に日常的な支援が必要な場合に役立ちます。
訪問看護: 医療機関と連携し、看護師が自宅を訪問して医療ケアを提供します。病状の観察や医療処置、リハビリテーションなどを行い、病状が不安定な高齢者に対して安心できる支援を提供します。
デイサービス: 日中に施設で提供されるサービスで、リハビリやレクリエーション、食事提供が含まれます。デイサービスを利用することで、家族の負担を軽減しつつ、高齢者が社会的な交流を持つ機会が増え、生活の質が向上します。
ショートステイ: 短期間の入所サービスで、家族が休養や外出をする際に利用されます。介護者が一時的に介護から解放され、リフレッシュするために非常に重要なサービスです。
以上のサービスを組み合わせて利用することで、介護者の負担を軽減し、介護を受ける高齢者がより質の高い生活を送ることができます。

2) 外部施設介護サービスの使い方

外部施設介護サービスは、在宅介護が困難になった場合や、専門的なケアが必要な場合に活用されることが多いです。以下では、主要な外部施設介護サービスについて説明し、それぞれの特徴と利用の際のポイントを紹介します。
特別養護老人ホーム: 常時介護が必要な高齢者向けの施設で、24時間体制のケアが提供されます。重度の要介護者に対して適切なケアが行われ、安心した生活が提供されます。
グループホーム: 認知症高齢者向けの小規模施設で、家庭的な環境でのケアが行われます。少人数の生活環境で、認知症の進行を緩やかにする効果が期待されます。
有料老人ホーム: 自費での入居が必要ですが、個別のニーズに応じた多様なサービスが提供されます。サービスの質が高く、プライバシーが守られる環境が整っています。
医療型ケア施設: 医療と介護が一体となった施設で、医療的なサポートが必要な高齢者向けです。医療ケアが必要な高齢者にとって、安全で適切なケアを受けられる場所です。
これらの外部施設介護サービスを理解し、状況に応じて適切に選択することが、介護者と高齢者の双方にとって最適なケアを提供するための鍵となります。

※本書を、介護に関する書のバイブルと評価しています。
ほぼ10年前に出版され、その時に既に種々問題提起している書ですが、本質的な問題は、現在も何ら変わることがありません。ご一読をお薦めします。
『在宅介護-「自分で選ぶ」視点から』

自宅介護を行う中で、家族だけでは対応が難しい場面や、介護者自身の負担が大きくなりすぎる状況が生じることがあります。
ここでは、そのような状況に対応するための方法と、ケアマネージャーの活用方法について整理します。
これらの対策を講じることで、介護者と家族全体が無理なく介護を続けられるようサポートします。

1) 自宅介護で不可能な介護への対応

自宅での介護は可能な限り行いたいと考える家族が多いですが、専門的な知識や技術が必要なケア、または重度の身体介護などは、家族だけで対応するのが難しい場合があります。
そのような場合にどのようなサービスを利用できるかを紹介し、適切な対応を図るための指針を示します。
専門的な医療ケア: 自宅での介護では対応が難しい医療ケア(例:点滴や褥瘡のケアなど)は、訪問看護を利用して行います。訪問看護師が専門知識を活かし、安全で効果的なケアを提供します。
重度の身体介護: 移動や入浴といった重度の身体介護は、家族にとって大きな負担となります。これらのケアは訪問介護員に依頼し、専門的なサポートを受けることで、介護者の負担を軽減します。
緊急対応: 急な病状の悪化や緊急の対応が必要な場合、地域包括支援センターや緊急対応サービスを活用します。これにより、迅速かつ適切な対応が可能となり、家族の不安を和らげます。
これらのサービスを適切に利用することで、自宅での介護が難しい状況でも安心して介護を続けることができます。

2) 負担軽減のためのサービス・施設利用

介護者が介護に専念するあまり、自身の健康や生活に影響が出ることがあります。
こうした事態を避けるため、介護者の負担を軽減するためのサービスや施設の利用が重要です。
以下に、そのようなサービスを紹介し、どのように活用すべきかを説明します。
デイサービス: 日中のケアを施設に任せることで、介護者が自分の時間を持つことができます。これにより、精神的なリフレッシュや身体的な休息が可能となり、長期的な介護を支える基盤を整えることができます。
ショートステイ: 家族が休息を取ったり、外出する際に短期間の入所サービスを利用することで、介護者は安心して休息を取ることができます。このような定期的な休養が、介護者の健康維持に不可欠です。
リフレッシュサービス: 介護者自身が定期的に休息を取るためのサービスを利用することが推奨されます。これにより、介護疲れを予防し、介護の質を維持することができます。
これらのサービスを積極的に利用することで、介護者自身の健康を守りながら、質の高い介護を提供し続けることが可能になります。

3) ケアマネージャーの活用

介護に関する全体的なプランニングやサービスの調整は、ケアマネージャーの役割が重要です。
ケアマネージャーの活用により、適切なケアプランを作成し、家族が抱える問題を解決するためのサポートを受けることができます。以下に、ケアマネージャーの具体的な活用方法を説明します。
ケアプランの作成: ケアマネージャーは、個々の状況に応じたケアプランを作成し、適切なサービスを組み合わせます。家族は現実的な問題や不安をケアマネージャーに伝えることで、より適切なケアプランの改善が可能となります。
サービス調整: 複数の介護サービスを利用する場合、その調整は煩雑になりますが、ケアマネージャーのサポートによりスムーズに調整が行えます。これにより、サービスの利用が効率化され、家族の負担が軽減されます。
アドバイス提供: ケアマネージャーは、介護に関する様々なアドバイスや情報提供を行い、家族の負担を軽減します。これにより、家族は必要な情報を得て、適切な判断を行うことができます。
このようにケアマネージャーとの連携を強くすることで、家族全体の介護負担を軽減し、より良い介護環境を整えることができます。

外部介護サービスとは、訪問介護・訪問看護で外部事業者の介護サービスを受けること、外部介護施設サービスは、デイサービスやショートステイなど、外部の介護施設に行って(送迎付きを含みます)介護サービスを受けることを意味しています。
それらを事情に応じて組み合わせて利用することで、負担の軽減など介護の改善を図ります。

1)併用事例の紹介

ケース概要
長女(45歳)はパートタイマーとして午前9時から午後3時まで働いています。
週5日勤務で、土日は休日です。彼女は夫と中学生の子供2人と同居しており、家族全員が日中は学校や仕事で家を空けるため、要介護2の母親の介護が必要です。
母親は軽度の認知症と、日常生活動作(ADL)に一部介助が必要な状態です。
併用サービス>
デイサービス:母親は週に3回、デイサービスに通い、日中は施設で過ごします。外部施設の活用です。
ここでは、リハビリテーションやレクリエーション活動を受け、認知機能の維持に努めています。
訪問介護:夕方、デイサービスから帰宅後に訪問介護員が自宅を訪れ、入浴介助や夕食の準備を行います。
在宅介護としての利用形態です。
メリット>
・長女は母親がデイサービスに通っている間、仕事に集中でき、家に帰ってきた際に母親のケアを訪問介護員に頼ることができるため、精神的・肉体的な負担が軽減されます。
・デイサービスでは母親に対して社会的な交流や適切なケアが提供され、訪問介護では個別のニーズに応じたケアが行われるため、母親のQOL(生活の質)が向上します。
<一層の改善提案
定期的なケアマネージャーとの相談: ケアマネージャーと定期的に相談し、デイサービスの日数を増やす、訪問介護の時間を調整するなど、母親の状態や家族の状況に応じた柔軟な対応を行うことが推奨されます。
究極の選択肢
母親の介護が家庭での負担を超えるようになった場合、認知症が進行した際にはグループホームへの入所、要介護3以上の状態になった場合には特別養護老人ホーム(特養)への入所を選択肢として検討することが考えられます。
これにより、母親が専門的なケアを受けつつ、家族の負担を大幅に軽減できます。

ケース概要>
70代男性Bさんは、要介護3の状態で、ほぼ車椅子生活を送っています。
彼の妻は70歳であり、主に在宅で介護を行っていますが、妻自身も高齢であるため、定期的に休息が必要です。
併用サービス>
ショートステイ: Bさんは月に一度、1週間程度のショートステイを利用しています。施設では専門的な介護が提供され、Bさんの状態に合わせたケアが行われます。
在宅介護: ショートステイ期間以外は、妻が自宅で介護を行い、訪問看護師のサポートも受けています。
メリット>
妻が定期的に休息を取ることで、長期的に介護を続ける体力と精神的余裕を保つことができます。
ショートステイ中にBさんは適切な医療と介護を受けることができ、症状の進行を抑えるためのリハビリも受けられます。
<一層の改善提案>
介護サービスの再評価と変更
Bさんの状態に応じて、訪問看護や訪問介護の利用頻度を見直し、ショートステイの期間を調整することで、妻の負担をさらに軽減することができます。
また、週に数回デイサービスを追加することも検討する価値があります。
究極の選択肢
Bさんの状態が悪化し、妻の介護負担が限界に達した場合、Bさんが認知症を伴う場合にはグループホーム、要介護3以上の状態であれば特別養護老人ホーム(特養)への入所も考慮するべきです。
これにより、妻が自宅での介護から解放され、夫婦の生活の質を保つことが可能になります。

以上の2つの例については、次項で、実際にかかる費用を試算しています。
確認してください。

2)併用による負担軽減

ケーススタディ>
60代の介護者Cさんは、要介護3の母親Dさんの介護を行っています。Cさんはパートタイムで働いており、母親の介護を続ける中で肉体的・精神的に負担が増してきました。
改善提案>
デイサービス利用回数の増加:母親のデイサービス利用日数を増やすことで、Cさんがより多くの時間を自身のケアや休息に充てることが可能になります。外部施設の利用です。
例えば、週5日のデイサービス利用を検討し、Cさんが働いている間、母親が安全でケアを受けられる環境を整えます。
訪問看護の導入:母親の健康状態が不安定な場合、訪問看護師の定期的な訪問を加えることで、Cさんの不安を軽減し、適切な医療ケアが提供されるようにします。これも一種の在宅介護(看護)です。
施設入所の選択肢:母親の介護がCさんにとって大きな負担となり、家庭での介護が困難になった場合、認知症の場合はグループホームへの入所、要介護3以上の場合は特別養護老人ホーム(特養)への入所を検討することができます。これにより、母親が専門的なケアを受けつつ、Cさんの負担を大幅に軽減できます。

具体例>
Eさんは、複数の介護サービスを利用して母親の介護を行っていますが、その調整に苦労しています。
ケアマネージャーと定期的に相談し、サービスの利用スケジュールを見直しました。
改善提案>
サービスの最適化: ケアマネージャーと連携して、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの利用頻度や内容を定期的に見直すことが重要です。母親の状態やEさんの状況に応じて、より柔軟にサービスを組み合わせ、効率的に利用できるようにします。
精神的支援の導入: Eさんが精神的に疲弊している場合、ケアマネージャーを通じてカウンセリングや介護者向けのサポートグループを紹介してもらうことで、精神的な負担を軽減することができます。
施設への入所: 母親の状態が進行し、Eさんの負担が限界に達した場合、特別養護老人ホームやグループホーム(認知症の場合)への入所を考慮し、母親が適切なケアを受けながらEさんが負担を軽減できるようにします。

事例
70代の夫Fさんは、要介護3の妻Gさんの介護を行っていますが、妻の症状の進行に伴い、介護の内容が変わってきました。
ケアマネージャーと相談しながら、訪問介護の回数を増やし、必要に応じてデイサービスからショートステイへの切り替えを行っています。
改善提案
サービスの柔軟性の向上:Fさんの負担をさらに軽減するために、ショートステイの利用頻度を増やすか、妻がより専門的なケアを受けられる特別養護老人ホームへの入所を検討することができます。
妻が認知症の場合は、グループホームへの入所も選択肢となります。
将来の計画>
介護の負担がFさんの健康や生活に影響を及ぼしている場合、ケアマネージャーと相談し、妻の介護を継続するための長期的なプランを立て、必要に応じて施設への入所を検討します。
また、訪問看護やリハビリテーションのサービスを追加することで、妻の生活の質を向上させつつ、Fさんの負担を減らすことが可能です。

外部介護サービスや施設サービスの併用によって、介護者の負担を軽減し、質の高いケアを提供することが可能になります。
しかし、こうした負担軽減策による介護サービスの利用度・利用回数の増加や、居宅型施設への入所は、当然ながら経済的な負担の増加にもつながります。経済的負担の増加を見積り、その対策を考慮した上で、適切な判断を行うことが重要です。
また、経済的負担が増加することで、家族は自分自身で介護を行うことを選択せざるを得なくなり、最終的には介護離職に至る可能性もあります。
したがって、様々な改善策を検討し、ケアマネージャーにも相談することで、家族全体の負担を最小限に抑え、最も望ましい選択を行えるようにすることが必要です。
このようにして、介護者とその家族が、生活の質を保ちながら、持続可能な介護生活を送ることができるようにしていきたいものです。

ここではもちろんごくごく一部ですが、介護施設や介護サービスを利用した場合、在宅介護・自宅介護を選択した場合、併用した場合、それぞれにかかる費用の試算例を挙げてみることにします。

1)費用の具体例

特別養護老人ホーム(特養)>
費用構造:入所者の要介護度や所得によって異なりますが、基本的に月額10万〜20万円程度が一般的です。この費用には、介護サービス費、食費、居住費などが含まれます。
メリット:24時間体制での介護が提供され、医療ケアも充実しているため、重度の要介護者にとって安心できる環境です。
デメリット:待機者が多く、すぐに入所できない場合があります。また、所得が高い場合は負担が大きくなることがあります。
有料老人ホーム>
費用構造:月額20万〜50万円程度と、特養に比べて費用が高額です。入居一時金が数百万〜数千万円かかるケースもあります。サービス内容や施設の立地により費用が大きく変動します。
メリット:サービスの充実度が高く、個別ニーズに応じたケアが可能です。また、プライバシーが保たれる居住環境が整っています。
デメリット:高額な費用がかかるため、資金計画が重要です。

訪問介護>
・費用:要介護度やサービス内容に応じて月額1万〜5万円程度。介護保険を利用することで自己負担は1割〜3割に抑えられます。
特徴:自宅で介護を受けるため、家族との生活が継続できる点がメリットです。
訪問看護>
費用:1回の訪問で約3000円〜1万円程度。こちらも介護保険の適用があり、自己負担は1割〜3割。
特徴:医療ケアが必要な場合に安心できるサービスです。医師との連携が重要です。
デイサービス>
費用:1日利用で約1000円〜3000円程度。食費や送迎費が別途かかる場合があります。
特徴:日中の活動が充実し、リハビリやレクリエーションが提供されます。家族の介護負担を軽減します。
ショートステイ>
費用:1泊2日で約2000円〜1万円程度。利用日数により総費用は変動します。
特徴:家族が休息を取るために利用することが多く、施設によっては長期利用も可能です。

2)在宅介護・外部介護施設併用時の費用負担

上記を受けて、今度は、併用した場合の費用負担試算例です。

ケース概要>
長女(45歳)は要介護2の母親を介護し、週3回のデイサービスと、夕方の訪問介護を併用しています。
費用の試算>
デイサービス:週3回利用で月額約1万8000円(1回約1500円×12回)。
訪問介護:週3回利用で月額約1万5000円(1回約1250円×12回)。
総費用:合計約3万3000円(1割負担の場合)。2割負担なら約6万6000円、3割負担なら約9万9000円。
改善後の費用>
デイサービスを週5回に増加し、訪問介護を夕方毎日利用する場合、月額の総費用は約5万5000円(1割負担の場合)に増加します。2割負担なら約11万円、3割負担なら約16万5000円になります。
結論>
サービスを増やすことで母親のケアは充実しますが、経済的負担が増えるため、資金計画が不可欠です。

ケース概要>
70代男性Bさん(要介護3)は、週に一度ショートステイを利用し、他の日は訪問看護と妻の介護を受けています。
費用の試算>
ショートステイ: 1泊2日を月4回利用で月額約1万6000円(1泊約4000円×4回)。
訪問看護: 週2回利用で月額約3万2000円(1回約4000円×8回)。
総費用: 合計約4万8000円(1割負担の場合)。2割負担なら約9万6000円、3割負担なら約14万4000円です。
改善後の費用>
ショートステイの利用頻度を増やし、訪問看護を週4回に増加する場合、月額の総費用は約8万円(1割負担の場合)に増加します。2割負担なら約16万円、3割負担なら約24万円です。
結論>
より多くのサービスを利用することで介護負担は軽減されますが、費用が増加するため、慎重な検討が必要です。

1割負担:65歳以上で介護保険を利用している多くの人が該当。年収が一定以下の場合、負担が1割となります。
2割負担:年収280万円以上の現役並み所得者が該当。
3割負担:高所得者が該当し、年収340万円以上が目安。

訪問看護の費用負担は、利用する状況に応じて介護保険または健康保険の適用が決まります。
介護保険適用の場合
65歳以上で要介護認定を受けている場合、訪問看護は介護保険の適用となります。介護保険では、自己負担は1割から3割です(所得に応じて異なります)。
健康保険適用の場合:
40歳以上65歳未満で、特定疾病(例:がん末期、筋萎縮性側索硬化症など)の場合や、65歳以上でも要支援1・2の認定を受けている場合は、訪問看護に健康保険が適用されることがあります。この場合、自己負担は通常3割です(年齢や所得による)。
どちらが適用されるかは、要介護認定の状況や年齢、病状によります。具体的な費用負担については、担当のケアマネージャーや医療機関に確認することが大切です。

以降の3)資金計画の立て方、および4)介護費用の節約方法については、一般論的な記述にとどまり、漠然として具体性に欠けるかもしれません。
前項で見て頂いたような種々の取り組みが、次項以降と繋がっていますので、その内容を思い起こして頂きながら、確認して頂ければと思います。

3)資金計画の立て方

a. 長期的な資金計画
費用の試算:介護費用を具体的に見積もり、長期にわたる介護に備えた資金計画を立てることが重要です。例えば、毎月の費用を把握し、数年間にわたる総額を算出します。
資産の整理:現在の資産や収入を確認し、どの程度の介護費用を捻出できるかを評価します。また、不動産の売却やリバースモーゲージの活用なども選択肢として検討します。
b. 助成制度の活用
介護保険:介護サービス費用の大部分をカバーするため、積極的に利用しましょう。サービス利用に際しては、ケアマネージャーと相談し、必要なサービスを選定します。
自治体の助成金:各自治体が提供する助成制度も活用します。例えば、低所得者向けの助成金や介護用品の補助金などがあります。地域包括支援センターで詳細を確認しましょう。

4)介護費用の節約方法

a. 低コストのサービス活用
地域包括支援センターの利用:地域包括支援センターでは、無料または低額で受けられる介護サービスや相談窓口が提供されています。介護保険外のサービスも紹介してもらえることがあります。
地域包括センターや自治体の介護担当部署に積極的に問い合わせしてみましょう。
デイサービスの一部利用:毎日利用するのではなく、週に数回の利用にとどめることで、費用を抑えることができます。また、短時間の利用も選択肢です。
b. 費用の見直し
割引制度の利用:特定の介護サービス業者が提供する割引プランや、パッケージサービスを利用することで、費用を節約することができます。地域や施設によっては、セット料金やキャンペーンを実施している場合があり、これらを利用することで費用を抑えることができます。
サービスの見直し、定期的チェックと適切な選択:ケアマネージャーと定期的に相談し、必要に応じてサービス内容を見直しましょう。利用者の状態や家族の状況に応じて、無駄なサービスを削減し、実際に必要なサービスに集中することで、コストを削減しながら最適なケアを提供できます。

介護施設の利用と在宅介護を組み合わせることで、介護者とその家族にとって最適な介護体制を築くことができます。
しかし、これに伴う費用の増加や経済的負担も考慮する必要があります。
特に、介護保険による自己負担割合や利用するサービスの頻度に応じて、費用が大きく変動するため、事前の資金計画と助成制度の活用が重要です。
また、定期的にサービス内容を見直し、必要に応じてケアマネージャーと相談しながら、柔軟に対応することで、費用を抑えつつ最適なケアを提供することが可能です。
つまりは、家族が無理なく介護を続けられるよう、経済的な側面も含めた総合的なプランを立てることが、介護離職を防止し、家族全体の生活の質を向上させる鍵となります。

以上、今回は、実際に介護生活になるとどういう介護をどのように利用し、その費用はどのくらいになるか、などをイメージして頂けるように説明してきました。
次回は、この「第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止」の総括として、重複する内容が多くなりますが、「介護の場所の選択・方法の選択と介護離職防止対策」というテーマでの最終回となります。

参考:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ、投稿済み記事リスト

第1章 介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう
第1回:「介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう (kaigoshukatsu.com)
第2回:介護離職の主な原因とその影響:介護離職しないための8ステップ+1と実践法 – 第2回 (kaigoshukatsu.com)
第3回:増加を続ける介護離職、その背景と対策を考える:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー3 (kaigoshukatsu.com)
第2章 介護保険申請手順と介護サービス利用の流れ
第4回:介護保険制度とは?:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー4 (kaigoshukatsu.com)
第5回:介護保険利用申請の手順とサービス利用までの流れ:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー5 (kaigoshukatsu.com)
第6回:在宅看護と介護保険外サービスの活用法|介護離職防止ガイド (kaigoshukatsu.com)
第7回:介護にかかる費用と負担軽減の具体策:自治体支援から節約方法まで (kaigoshukatsu.com)
第8回:介護保険を活用した介護サービスと費用の理解|具体内容と計算方法 (kaigoshukatsu.com)
第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
第9回:介護施設の種類と特徴、選び方のポイント | 介護離職防止の実践ガイド (kaigoshukatsu.com)債10回
第10回:介護専門職の種類と選び方、有効な関係づくり | 介護離職防止ガイド (kaigoshukatsu.com)
第11回:在宅介護のメリットとデメリット:結城康博氏の視点から見る実態と課題 (kaigoshukatsu.com)

参考:介護離職しないための8ステップ+1と実践法」構成(予定)

1. 介護離職とは?その現状と原因
1-1:介護離職の定義と現状
1-2:介護離職の主な原因と影響
1-3:増加を続ける介護離職の背景と対策
2. 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止
2-1:介護保険制度の基本情報と手続き
2-2:要介護度認定と介護サービスの違い
2-3:在宅看護と介護保険外サービスの活用法:介護離職を防ぐための実践ガイド
2-4:介護にかかる費用と負担軽減の方法
2-5:介護サービスの具体的内容と費用計算の基本
3. 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
3-1: 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係つくり
3-3: 在宅介護のメリットとデメリット
3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り
3-5: 介護の場所・方法の選択と介護離職防止対策
4. 自治体と地域の支援制度を理解し活用する
4-1: 自治体の介護関連支援制度と担当部署
4-2: 自身の自治体の介護支援制度と活用方法調べ
4-3: 地域包括支援センターの役割と利用方法
4-4: 介護制度を利用するための地域情報の事前調査と対策
5. 仕事と介護の両立を支援する制度を理解し活用する
5-1: 育児・介護休業法とその基本ポイント
5-2: 介護休業制度と介護休業給付金の活用法
5-3: 介護休暇と短時間勤務制度の特徴と利用方法
5-4: 職場の理解とサポートの重要性
6. 企業による介護離職防止策の取り組みと活用
6-1: 企業が提供する介護支援策とその実際の運用
6-2: 介護離職防止対策アドバイザーの役割と効果
6-3: 職場環境の整備と労働時間の柔軟な設定
6-4: 成功事例から学ぶ企業の取り組み
7. 家族との介護協力と介護離職防止対策
7-1: 家族間の協力とコミュニケーション、役割分担とメンタルケア
7-2: 介護休業と介護休暇の適切な活用法
7-3: ケアプランとデイサービスの利用と介護分担方法
7-4: 家族がいない場合の適切な対応方法
8. 介護離職防止を想定しての介護の事前準備・計画と相談
8-1: 介護に必要な情報の収集方法
8-2: 介護・見守り体制の整備と現状改善
8-3: 地域包括支援センターと相談サービスの利用方法
8-4: 緊急時の対応計画の策定
8-5: 介護方法の基礎知識・技術の理解と必須習得事項
9. 万一の介護離職後の再就職・転職とキャリア構築
9-1: 離職後の再就職支援制度とは?
9-2: 再就職に向けた準備と転職活動のポイント
9-3: 転職支援サービスとその活用法
9-4: 介護経験を活かした新たなキャリア構築の方法

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