
介護専門職の役割と選び方、関係づくり:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー10
「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ進行中です。
家族介護あるいは自分介護への備えを進めていくうえで初めに行っておくべき事とは?
前回から「第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止」に入っており、今回は「介護専門職の役割と選び方、関係づくり」がテーマです。

第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
介護専門職の役割と選び方、関係づくり | 介護離職防止の実践ガイド
1.介護専門職の種類、資格要件と役割
介護に関わる専門職は多岐にわたり、それぞれ特化した役割と資格要件があります。
ここでは、以下の主要な介護専門職と介護業務に関連した専門的な仕事を担当する職種の役割、働き方を紹介します。
1)ケアマネージャー(介護支援専門員)
・役割:介護サービスの計画を立て、各種サービスの調整を行います。
・資格要件:介護支援専門員実務研修の修了と試験合格が必要です。
・働き方:自治体や民間の介護事業所に所属して働くことが一般的です。
2)ホームヘルパー(訪問介護員)
・役割:高齢者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行います。
・資格要件:介護職員初任者研修(初級)、介護職員実務者研修(中級)、介護福祉士(上級)があります。
・働き方: 訪問介護事業所に所属して高齢者の自宅を訪問する場合と、高齢者が入居している特養やサ高住、老人ホームなどの施設やデイサービス等通っている施設、短期に入所する施設内で働くなど、特定の介護施設に所属して施設内で働く場合があります。
3)訪問看護師
・役割: 介護職とは異なり、医療的なケアを提供し、病状の観察や健康管理を行います。介護職は原則、この仕事に従事することはできません。
・資格要件: 看護師資格と訪問看護の実務経験が必要です。
・働き方: 訪問看護ステーションに所属して利用者の自宅を訪問します。
4)理学療法士
・役割: 身体機能の維持・回復を目的としたリハビリテーションを提供します。
・資格要件: 理学療法士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 病院やリハビリテーション施設に所属して働く場合と、在宅介護で利用者の自宅を訪問する場合があります。
5)作業療法士
・役割: 日常生活動作の改善を目的としたリハビリテーションを提供します。
・資格要件: 作業療法士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 病院やリハビリテーション施設に所属して働く場合と、在宅介護で利用者の自宅を訪問する場合があります。
6)介護助手(無資格者)
・役割: 資格がなくても、介護施設や在宅での介助サービスに従事することができます。具体的には、掃除や食事の準備、簡単な介助などを行います。
・資格要件: 特に資格は不要ですが、施設によっては研修を受けることがあります。
・働き方: 特定の介護施設に所属して働く場合が多いですが、在宅介護の場合もあります。
以下の2職種は、直接介護業務を担当することはなく、特定の専門業務領域を担当します。
7)社会福祉士
・役割: 福祉サービスの提供と相談支援を行います。
・資格要件: 社会福祉士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 自治体の福祉事務所や社会福祉法人に所属して働きます。
8)精神保健福祉士
・役割: 精神障害者の生活支援と社会復帰支援を行います。
・資格要件: 精神保健福祉士国家試験の合格が必要です。
・働き方: 自治体の精神保健福祉センターや精神科病院に所属して働きます。

2.認可介護施設に必要な介護専門職の種類と人数基準
認可介護施設では、介護専門職の種類とその人数が法令で定められています。以下に主要な基準を示します。
1)特別養護老人ホーム(特養)
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 入居者100人につき1人以上(夜間を除く)
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
2)有料老人ホーム
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 医療的ケアが必要な場合、常勤で1人以上
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
3)グループホーム
・介護職員: 入居者3人につき1人以上
・看護師: 医療的ケアが必要な場合、非常勤でも配置
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
4)デイサービス
・介護職員: 利用者10人につき1人以上。介護職員には介護職員初任者研修(初級)以上の資格が求められます。
・看護師: 必要に応じて配置
・ケアマネージャー: サービス提供責任者が必要
5)ショートステイ
・介護職員: 利用者3人につき1人以上。介護職員には介護職員初任者研修(初級)以上の資格が求められます。
・看護師: 必要に応じて配置
・ケアマネージャー: 施設ごとに1人以上
3.介護専門職選びの基本と信頼できる介護サービスの見分け方、有効な活用法
介護専門職の選び方については、利用する介護施設に委ねることが多く、実際に自分で選択できるケースは限られています。
ここでは、選択できる場合の選択基準と信頼できるサービスの見分け方について述べます。
1)ケアマネージャーの役割と有効な活用法
・ケアマネージャーの役割
ケアマネージャーは、介護サービス利用者にとって望ましい介護サービス計画を立案・提案する責任があります。
このため、ケアマネージャーと良好な関係を築き、ニーズや希望を明確に伝えることが重要です。
・居宅型施設の場合の注意点
特定の居宅型施設に配置されたケアマネージャーは、施設専属の立場となるため、施設主導型の押し付けのサービス計画が提示されることがあります。
この場合、なかなか、利用者サイドの心構えや具体的な要求要望を伝えることが難しいという問題があります。
このため、利用者や家族は、自分のニーズや希望をしっかりと伝え、必要なサポートを得るよう努めましょう。
2)介護サービスを検討、選択できる、あるいはすべきケース
・自ら介護サービス計画を立てる
実は、実際にどのような介護・介助サービスを受けるかの計画は、介護を受ける人自身、あるいはその家族が立てても良いのです。
興味関心がある人、自分で考えて計画を立てたい、実際に必要かどうか有効かどうかを自分で判断したいと考え、そのために介護保険制度や介護・介助サービスなどを詳しく調べて、納得がいく介護を受けたい人。
それらの人は、十分その価値があると思います。
・介護サービス利用者のニーズに基づく選択
例えば、特定の医療ニーズや介護・介助ニーズがある場合、その分野に特化した、あるいは適した専門担当者をケアマネジャーに依頼して、あるいは自身で探して指名します。
ケアマネージャーが配慮してくれる場合もありますが、自身が明確に希望を伝えることで実現する場合があります。
・サービス提供者の評価と実績の確認
利用者のレビューや評価を確認し、実績のある介護施設あるいは個人サービスを選びます。
・施設における介護専門職の配置基準の確認
認可介護施設が法令で定められた基準通りに介護専門職を配置しているか確認し、その基準を満たした事業者と介護専門職を選ぶようにしましょう。
施設のパンフレットやホームページ、訪問時などに確認するとよいでしょう。
3)信頼できるサービスの見分け方
前項の2)と意味合いが重なっていると感じられると思いますが、念のため、提供される、あるいは受ける介護・介助サービスが信頼できるかどうか判断する上での留意点を上げておきます。
・資格の確認
専門職が適切な資格を有しているか確認します。
・実績と経験の確認
提供するサービスの実績と経験を確認し、信頼性を評価します。
・サービス提供内容の詳細確認
提供されるサービスの内容と範囲を詳しく確認し、ニーズに合致しているか評価します。
4)有効な活用法
ここまで述べてきたことと一部重複しますが、一般論として、介護専門職のサービスを受ける上で有効な活用方法をメモしておきます。
・良好な関係づくりおよびコミュニケーション形成
介護専門職および介護施設と利用者・家族が良好な関係を築くことが重要です。
事前準備としてのコミュニケーション、介護サービスを受ける状態になった時に定期的な、あるいは臨機応変にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築しましょう。
こちらの希望を率直に、はっきりと伝えられること、疑問や質問も率直に伝えられること、そのための関係づくりといえます。
・介護される者およびその家族としての在り方
自分の状態や希望を専門職に伝え、自立を目指した取り組みを心掛けましょう。
また本人が無理な場合は、家族として本人に代わって介護担当者や事業所とコミュニケーションを取ることができるようにしておきたいものです。
その際家族間のコミュニケーション、意思疎通をしっかり行っておくことが不可欠であることを確認しておきます。
以上、前回の介護施設についての理解に続いて、介護専門職についての理解を目的とした説明・解説を行いました。
基本的なことですが、介護離職を防ぐ上で、知っておきたい内容です。
こうした基礎知識を持っているかいないかは、実際に悩み、しっかり考える必要が生じた場合に、判断や行動に違いが生じさせることになると思います。
次回は、この2回の内容とは違って、自宅で、在宅で介護サービスを受けることについて「在宅介護のメリットとデメリット」と題して考えることにします。

※ 前の記事に戻ります:介護施設の種類と特徴、選び方のポイント | 介護離職防止の実践ガイド
※ 次の記事に進みます:在宅介護のメリットとデメリット:結城康博氏の視点から見る実態と課題
この記事へのコメントはありません。