
介護サービスの具体的内容と費用計算の基本:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー8
進行中の「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ。
第1章に続く「第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止」の5回目「介護保険で受ける介護サービスの内容と費用の理解」を今回取り上げます。
第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止:2-5 介護保険で受ける介護サービスの内容と費用の理解
1.介護サービスと介助サービスの基本的な区分
介護サービスと介助サービスは、介護保険制度内で提供される主要な支援内容です。
介護サービスは、日常生活をサポートするものであり、例えば、食事の準備や掃除、洗濯などの生活援助を含みます。
一方、介助サービスは、身体的なケアに焦点を当てたサービスで、入浴や排泄、移動の支援などを提供します。
この区分は、利用者のニーズに応じて、提供されるケアの内容を明確に分けるために重要です。
1)介護サービスの分類と内容
① 訪問介護(ホームヘルプサービス):日常生活支援
自宅で生活援助、身体介護の日常生活支援を提供します。
・生活援助:食事の準備、掃除、洗濯、買い物、ゴミ出しなど、日常生活の基本的な活動のサポートです。
・身体介護:入浴、排泄、着替え、食事の介助、移動のサポートなど、身体的な介護が必要な場合の支援です。
② デイサービス(通所介護):日中の生活支援
施設での食事、入浴、機能訓練、日中の活動や交流の場を提供し、家族の介護負担を軽減します。
・食事提供:利用者に昼食やおやつを提供し、栄養管理を行います。
・入浴介助:利用者が安全に入浴できるよう、必要な介助を行います。
・機能訓練:日常生活動作の向上を目指したリハビリテーションやレクリエーション活動。
③ ショートステイ(短期入所生活介護)
短期間の入所による食事、入浴、介護を提供します。家族の休養や不在時に利用します。
④ グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
認知症高齢者向けの家庭的な共同生活環境での支援を行い、認知症の進行を遅らせる日常生活支援を提供します。
2)介助サービスの分類と内容
① 訪問入浴介護
専門職員が自宅で入浴の介助を行います。自宅での入浴が困難な高齢者向けです。
② 訪問看護
看護師が自宅を訪問し、医療的なケアを提供します。病状観察、医療機器の使用サポート、医師の指示に基づく医療行為を行います。
③ 訪問リハビリテーション
理学療法士や作業療法士による自宅でのリハビリテーションを行い、身体機能の維持・向上を図ります。
④ 訪問介護看護
訪問介護と訪問看護を組み合わせ、医療ケアと日常生活の支援を同時に提供します。
3)サービス選択と利用のポイント
・ケアプランの作成: ケアマネージャーが利用者のニーズに応じたプランを作成します。
・サービスの質と提供者の選定: 経験豊富で信頼できる提供者を選び、定期的にサービス内容を確認します。

2.介護サービスの「単位数」とその設定方法
介護における単位とは、地域区分、サービスの種類や時間数、介護度、人件費割合などによって設定された点数のことです。
その計算は、地域とサービスによって決定される単位数に1単位ごとの単価(単価は1単位=10円が基本)を掛け合わされたもので、それに基づいて利用者の負担額が算出されます。
またこれは、介護サービス事業者が利用者に行った介護サービスの算出基準であり、介護保険財政主管に請求する事業収益計算の証拠となるものです。
各介護サービス事業者は、サービス提供に際して設定された単位数に、地域ごとに定められた単位あたりの単価を掛け合わせることで、利用者に請求する金額を決定します。
利用者の自己負担は、通常1割から3割で、残りは介護保険から支払われます。
以下は、介護サービスの事業種区分の中から一部を取り出して例として示した具体的な単位数です。
1)訪問介護(ホームヘルプサービス)
・身体介護:30分未満は約250単位、30分以上1時間未満は約500単位、1時間以上1時間30分未満は約750単位など、時間帯で単位数が設定されており、サービスの内容や時間に応じて異なります。
・生活援助:20分未満は約100単位、20分以上45分未満は約200単位、45分以上は約250単位など、家事援助の時間に応じて単位が設定されています。。
2)デイサービス(通所介護)
・基本単位(1日あたり):3時間以上5時間未満は約350単位、5時間以上7時間未満は約450単位、7時間以上9時間未満は約600単位など、利用時間ごとに単位数が異なります
・加算単位:食事提供や機能訓練、特別なケアが必要な場合には追加の単位が加算されます。
3)ショートステイ(短期入所生活介護)
・基本単位(1日あたり):1日の利用につき単位が設定されており、サービスの提供時間や内容によって変動します。 一般室利用は約600単位、個室利用は約700単位です。
・医療的ケア:必要な場合には、別途単位が設定されることがあります。
4)訪問看護
・基本単位(1回あたり): 看護師が訪問する時間に基づいて単位が設定されており、また、医療的なケアが含まれる場合には別途単位が追加されます。20分未満は約300単位、30分未満は約450単位、30分以上1時間未満は約800単位です。
詳細な単位数の設定や計算方法については、厚生労働省の公式資料や各地域の介護保険制度の説明書に詳述されています。
例えば、こうした介護サービスのすべての介護保険制度で規定した事業種の特徴と、それぞれに対応した単位数などは、次の資料で確認することができます。
⇒ 各介護サービスについて
⇒ 介護給付費単位数等サービスコード表(令和6年4月施行版)
利用者やその家族がこれらの情報を理解することで、適切な介護サービスの選択と費用計画を立てることが可能になります。
参考:「訪問介護」サービス類型と報酬について
4つ目の画像にある、<各介護サービスについて>で示された介護サービスの事業運営形態リストから、「訪問介護」についての記述部分を抽出し、サービス類型、サービス行為区分、介護報酬に関する資料画像を以下に掲示しました。
介護および介助サービスについて具体的なイメージを持って頂くための参考になればと思います。
介護報酬は、本来介護事業者が介護財政主管部署に請求する計算根拠になるものですが、その1割(2~3割)がサービスを受ける人の自己負担になる単位数というわけです。




3.特養およびサ高住における介護サービスの月間単位数および自己負担額試算
ここでは、前項と前々項を受けて、特養(特別養護老人ホーム)とサ高住(サービス付き高齢者住宅)を1か月間利用した場合の標準的な介護サービス利用単位数と自己負担額を調べてみることにします。
1)特別養護老人ホーム(特養)要介護3の場合の月間単位数・自己負担額とその根拠
① 基本的な介護サービス種別単位数
・基本介護:日常生活の介護全般(食事、排泄、着替えなど)
1日の介護時間の平均値から、1日あたり約246単位(7,380単位 ÷ 30日)として計算、7,380単位/月
通常、特養では24時間体制でケアが提供されるため、この単位数は介護度に応じた日常的なサポートを反映しています。
・医療管理:定期的な健康チェック、服薬管理、医療機器の操作など
1回あたり30分〜1時間、毎日または週数回行い、単位数は、1日あたり50単位として1,500単位/月
特養では医療管理が必要な利用者が多く、これが標準的な単位数になります。
・機能訓練:理学療法、作業療法、リハビリテーション
週2〜3回、 1回あたり30分〜1時間で100単位とし、週3回の訓練で月12回で、1,200単位/月となります。
・食事支援:食事の準備、配膳、食事介助
毎日毎食、1回あたり30分〜1時間。 1食あたり約33単位とし、1日3食で月に90回の支援が行われる場合1,000単位/月
・入浴支援:入浴の介助
週2〜3回、 1回あたり30分〜1時間、約50単位とし、週2回の入浴介助で月8回の場合の単位数が500単位/月
② 合計単位数:11,580単位/月
③ 月間自己負担額:約11,580円(1割負担の場合)
④ 単位数の根拠
・基本介護: 1日あたり約246単位(7,380単位 ÷ 30日)
・医療管理: 1日あたり50単位(1,500単位 ÷ 30日)
・機能訓練:1回あたり100単位、週3回の訓練で月12回(1,200単位/月)
・食事支援:1食あたり約33単位、1日3食で月90回(1,000単位/月)
・入浴支援:1回あたり50単位、週2回の入浴介助で月8回(500単位/月)
これらの単位数は、要介護3と設定し、標準的な例を基にした推定であり、実際のサービス提供状況によって異なる場合があります。また、サービス内容や頻度も、利用者の状況や施設の方針によって異なるので、個別に確認することが必要です。
この試算は介護保険が適用される介護サービスだけに限定しており、介護保険外サービス費用は含みません。
また食費、施設利用料なども現制度では保険適用外ですから、注意が必要です。
義母特養入所時令和2年5月度請求書および諸費用説明書から
比較するには分かりにくい資料ですが、まず通常と違うのが、5月の請求額に、エアマット購入代94,610円が入っており特養にしては高額になっていること。
この月だけに発生した一時的な費用であり、この額を差し引くと焼く11万円です。
ではこの額のうちのどの項目が、介護保険適用サービス費用なのかが、この資料からは読み取れません。
上記試算額約11,580円に近い額は、この図の中から特定することが難しかったのです。
実際には当初は、義母の年金収入、月平均11万円レベルで、特養への支払額に少しだけ不足する状態であり、下の方の資料の<要介護4><第3段階>月額95,760円に若干費用が加算されたものであったと思います。
11,580円は、施設費や食事代、日用品代などは含まない単位数なので、請求書のそれらの保険外費用を考慮すると、実際と大きく異なる数字・金額ではないと思われます。

2)サービス付き高齢者住宅(サ高住)要介護1の場合の月間単位数・自己負担額とその根拠
① 基本的な介護サービス別単位数
・基本介護:日常生活の介護(軽度な支援)
毎日または必要に応じて、1日あたりの平均時間を想定し、1日あたり約143単位、月合計4,300単位/月
サ高住では特養ほどの密なケアは提供されず、利用者の自立度に応じた軽度な支援が主です。
・医療管理:服薬管理や健康チェック
毎日または週数回、 1回あたり30分、1日あたり約33単位として、1000単位/月
・機能訓練:基本的なリハビリテーション
週1〜2回、1回あたり30分、 1回あたり約100単位、月8回の機能訓練を受ける場合の単位数として800単位/月
・食事支援:食事の準備と配膳、軽度の食事介助
毎食、 1回あたり30分、 1食あたり約20単位、1日3食で月に90回の支援が行われる場合として600単位/月
・入浴支援:入浴のサポート
週1回、1回あたり30分、1回あたり約50単位、月に8回の支援が行われる場合、400単位/月
これらの単位数は、要介護1を設定し、標準的な例を基にした推定であり、実際のサービス提供状況によって異なる場合があります。
また、サービス内容や頻度も、利用者の状況や施設の方針によって異なるので、個別に確認することが必要です。
② 合計単位数: 7,100単位/月
③ 月間自己負担額:約7,100円(1割負担の場合)
④ 単位数の根拠
・基本介護: 1日あたり約143単位(4,300単位 ÷ 30日)
・医療管理: 1日あたり約33単位(1,000単位 ÷ 30日)
・機能訓練: 1回あたり100単位、月8回の機能訓練(800単位/月)
・食事支援: 1食あたり約20単位、1日3食で月90回(600単位/月)
・入浴支援: 1回あたり約50単位、月8回の入浴介助(400単位/月)
以上が、要介護1で、サ高住利用時の介護保険適用介護サービスを受けた場合の、あくまでも一つの単位数および自己負担額の試算例です。
義母サ高住入所・平成29年1月費用資料から
この例と、義母がサ高住に入所していた折り作成された、以下の平成29年1月の請求書の該当部分と比較してみたいと思います。
この時要介護度は要介護1。
上記の試算では、月間自己負担額が 約7,100円となっています。
これに対し、この請求書では、<※介護保険1割負担>部分が該当し、3,474円(+医療分262円)と低額になっています。
その理由は、現在の単位数が、その後の法改定で引き上げられ、当時の方が低かったのではということと、何よりも、義母が受けていた介護サービスが、少なかったことが最大の理由です。
それは、他施設へ出向いていってのリハビリを拒否するなど、義母自身が多くを望まなかったことと、施設の職員が人手不足で、多くサービスを提供できなかったためと思います。
利用者サイドの意向を受け、かつ施設の事情もあって、ケアマネジャーがそれにそってサービス計画を立て、施設が運営したためといえます。
とはいっても、サ高住は、家賃収益や共益費、保険外の、施設サイドで決めた生活支援サービス費で、相応の収益を上げているわけで、その金額がこの請求書に反映されていることが分かります。

4.介護保険サービスにかかる費用試算
折角なので、厚労省HPに、介護サービス概算料金の試算ができる欄がありましたので、紹介します。
試しに、①②③それぞれの条件を選択設定して、介護保険サービスを利用した場合の費用を確認してみてください。
⇒ 概算料金の試算 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
のリンクを開き、現れた画面で、以下を操作して計算された金額がその費用の概算額です。
① 分類から選択:自宅に住む、施設に住むのいずれかを選択します。
② 要介護度の選択:要支援1.2、要介護1.2.3.4.5 のいずれか該当するものを選択します。
③ サービス名の選択:利用する1つ、複数利用する場合は該当するものを選択します。
※自宅で介護サービスを受ける場合の費用の試算


※ 施設で介護サービスを受ける場合の介護費用試算

まとめと提言
この記事では、介護保険を利用して受ける介護サービスの具体的な内容と費用の計算方法について説明しました。
介護サービスと介助サービスの違いを理解し、適切なサービスを選択することも、介護離職を防ぐために役立つでしょう。
また、費用の仕組みを理解し、見積もりや試算を行うことで、介護にかかる経済的な負担を事前に把握し、適切な準備をすることが可能になります。
加えて、保険適用分だけで介護費用は済まないことも十分お分かりいただけたと思います。
ゆえに、介護離職を招かないためにも、多面的に介護保険制度の理解を進め、介護への備えを着実に進めて行って頂きたいと思います。
この記事が、読者の皆様にとって有益な情報となり、適切な介護サービスの選択に役立つことを願っています。
今回で、「第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止」を終え、次回から、「第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止」に入ります。

「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ、投稿済み記事リスト
第1章 介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう
第1回:「介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう (kaigoshukatsu.com)」
第2回:介護離職の主な原因とその影響:介護離職しないための8ステップ+1と実践法 – 第2回 (kaigoshukatsu.com)
第3回:増加を続ける介護離職、その背景と対策を考える:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー3 (kaigoshukatsu.com)
第2章 介護保険申請手順と介護サービス利用の流れ
第4回:介護保険制度とは?:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー4 (kaigoshukatsu.com)
第5回:介護保険利用申請の手順とサービス利用までの流れ:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー5 (kaigoshukatsu.com)
第6回:在宅看護と介護保険外サービスの活用法|介護離職防止ガイド (kaigoshukatsu.com)
第7回:介護にかかる費用と負担軽減の具体策:自治体支援から節約方法まで (kaigoshukatsu.com)
「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」構成(予定)
1. 介護離職とは?その現状と原因
1-1:介護離職の定義と現状
1-2:介護離職の主な原因と影響
1-3:増加を続ける介護離職の背景と対策
2. 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止
2-1:介護保険制度の基本情報と手続き
2-2:要介護度認定と介護サービスの違い
2-3:在宅看護と介護保険外サービスの活用法:介護離職を防ぐための実践ガイド
2-4:介護にかかる費用と負担軽減の方法
2-5:介護サービスの具体的内容と費用計算の基本
3. 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止
3-1: 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
3-2: 介護専門職の役割と選び方
3-3: 在宅介護のメリットとデメリット
3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用比較
4. 自治体と地域の支援制度を理解し活用する
4-1: 自治体の介護関連支援制度と担当部署
4-2: 自身の自治体の介護支援制度と活用方法調べ
4-3: 地域包括支援センターの役割と利用方法
4-4: 介護制度を利用するための地域情報の事前調査と対策
5. 仕事と介護の両立を支援する制度を理解し活用する
5-1: 育児・介護休業法とその基本ポイント
5-2: 介護休業制度と介護休業給付金の活用法
5-3: 介護休暇と短時間勤務制度の特徴と利用方法
5-4: 職場の理解とサポートの重要性
6. 企業による介護離職防止策の取り組みと活用
6-1: 企業が提供する介護支援策とその実際の運用
6-2: 介護離職防止対策アドバイザーの役割と効果
6-3: 職場環境の整備と労働時間の柔軟な設定
6-4: 成功事例から学ぶ企業の取り組み
7. 家族との介護協力と介護離職防止対策
7-1: 家族間の協力とコミュニケーション、役割分担とメンタルケア
7-2: 介護休業と介護休暇の適切な活用法
7-3: ケアプランとデイサービスの利用と介護分担方法
7-4: 家族がいない場合の適切な対応方法
8. 介護離職防止を想定しての介護の事前準備・計画と相談
8-1: 介護に必要な情報の収集方法
8-2: 介護・見守り体制の整備と現状改善
8-3: 地域包括支援センターと相談サービスの利用方法
8-4: 緊急時の対応計画の策定
8-5: 介護方法の基礎知識・技術の理解と必須習得事項
9. 万一の介護離職後の再就職・転職とキャリア構築
9-1: 離職後の再就職支援制度とは?
9-2: 再就職に向けた準備と転職活動のポイント
9-3: 転職支援サービスとその活用法
9-4: 介護経験を活かした新たなキャリア構築の方法
※ 前の記事に戻ります:介護にかかる費用と負担軽減の具体策:自治体支援から節約方法まで
※ 次の記事に進みます:介護施設の種類と特徴、選び方のポイント | 介護離職防止の実践ガイド
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