介護保険利用申請の手順とサービス利用までの流れ:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー5

「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズを進めてきています。
今回は、「第1章 介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう」に続く、「第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止」の2回目です。

介護保険の利用を開始するには、まず要介護認定を受ける必要があります。その手順は以下の通りです。

1)市区町村介護保険課での申請

要介護認定の申請介護保険によるサービスを利用するには、要介護認定の申請が必要になります。
申請には、介護保険被保険者証が必要です。
また、40~64歳までの人(第2号被保険者)が申請を行なう場合は、医療保険証が必要です。
申請書を提出します。申請は本人または代理人が行うことができます。

2)認定調査および主治医意見書

上記の申請に基づき、市区町村等の調査員または委託を受けた調査員が、申請者の自宅や施設等を訪問し、日常生活の状況や心身の状態を確認するための認定調査を行います。
・主治医意見書は市区町村が主治医に依頼をし、主治医は、申請者の健康状態や介護が必要な程度について意見書として作成します。主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要です。
なお、申請者の意見書作成料の自己負担はありません。

3)介護認定審査会による審査判定

一次判定:調査結果及び主治医意見書の一部の項目はコンピューターに入力され、全国一律の判定方法で要介護度の判定が行なわれます。
二次判定:一次判定の認定調査結果と主治医意見書に基づき、介護認定審査会が要介護度の判定を行ないます。
コンピュータによる一次判定は、その方の認定調査の結果を基に、約3,500人に対し行った「1分間タイムスタディ・データ」から推計します。
一次判定のコンピュータシステムは、認定調査の項目等ごとに選択肢を設け、調査結果に従い、それぞれの高齢者を分類してゆき、「1分間タイムスタディ・データ」の中からその心身の状況が最も近い高齢者のデータを探しだして、そのデータから要介護認定等基準時間を推計するシステムです。
この方法は以下の樹形モデルと呼ばれるものです。


4)認定および認定結果の通知

市区町村は、介護認定審査会の判定結果にもとづき要介護認定を行ない、申請者に結果を通知され、要介護度が決定します。
申請から認定の通知までは原則30日以内に行なわれます。

5)認定度合い:要支援1・2から要介護1~5までの7段階および非該当

推計は、5分野(直接生活介助、間接生活介助、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為)について、要介護認定等基準時間を算出し、その時間と認知症加算の合計を基に、以下のように要支援1~要介護5に判定されます。

なお、要介護認定において「非該当」と認定された方でも、市区町村が行っている地域支援事業などにより、生活機能を維持するためのサービスや生活支援サービスが利用できる場合があります。
それぞれの市区町村又は地域包括支援センターに相談して下さい。

(参考)⇒ 要介護認定はどのように行われるか (mhlw.go.jp)

介護保険の申請には以下の書類が必要です。
介護保険申請書: 市区町村の介護保険課で配布されています。
被保険者証の写し: 申請者が第2号被保険者である場合に必要です。
主治医の診断書: 診断内容を確認するためのもので、申請時に同時に提出することが望ましいです。
注意点とアドバイス
申請のタイミング: 介護が必要になったと感じたら、早めに申請することが大切です。申請から認定までに時間がかかることがあります。
書類の準備: 必要書類を事前に揃えておくことで、スムーズな手続きが可能になります。
相談窓口の活用: 市区町村や地域包括支援センターなどの相談窓口を活用して、手続きに関する不明点を解消しましょう。

実際にサービスを受けるにはどうしたらいいのでしょうか。
ケアプランなしに介護サービスは受けることができません。以下、確認していきます。


1)介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)の作成

サービスを利用する場合は、介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)の作成が必要となります。
「要支援1」「要支援2」と認定された方の介護予防サービス計画書は地域包括支援センターに相談します。
「要介護1~要介護5」認定の方の介護サービス計画書は、介護支援専門員(ケアマネジャー)のいる、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ依頼します。
但し、在宅のサービスを利用する場合は、居宅介護支援事業者(介護支援専門員)にケアプランを作成してもらい、
施設のサービスを利用する場合は、施設の介護支援専門員にケアプランを作成してもらいます。
依頼を受けた介護支援専門員は、どのサービスをどう利用するか、本人や家族の希望、心身の状態を充分考慮して、介護サービス計画書を作成します。

2)ケアプランに基づいた介護(介護予防)サービス利用の開始

ケアプランとは、どのような介護サービスをいつ、どれだけ利用するかを決める計画のことです。
介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっています。
自分の要介護度が判定された後は、自分が「どんな介護サービスを受けるか」「どういった事業所を選ぶか」について、上記の相談や依頼内容に基づき、介護や支援の必要性に応じてサービスを組み合わせたサービス計画書(ケアプラン)を作成します。
この計画書ケアプランに基づき介護サービス事業所と契約を結び、サービス利用が始まります。


それでは実際にどのようなサービスを受けることができるのかを見ていきます。
まず要介護度の違い、要介護1以上と要支援、2区分によって、介護給付と予防給付の2種類に分けられます。

1)介護給付と予防給付

・介護給付:要介護1~5と認定された方が利用できるサービス
・予防給付:要支援1~2と認定された方が利用できるサービス。介護予防(生活機能を維持・向上させ、要介護状態にあることを予防すること)に適した、軽度者向けの内容・期間・方法で提供されるサービス

2)サービスの種類(概要)

この2種類をまとめた上で、サービスの種類を大きく分けると次のようなサービスを受けることができます。


3)介護保険で利用できるサービスの種類と内容
上記の6種類のサービスを実際に受ける状況を想定してより具体的に分類したのが、以下の一覧表です。
介護の相談・ケアプラン作成
自宅に介護サービス提供者が訪問して行うサービス:訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、夜間対応訪問介護、定期巡回・臨時対応型居宅訪問介護看護
施設に通って受けるサービス:通所介護(デイサービス)、通所リハビリ、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知対応型通所介護
・訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けるサービス:小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護(複合サービス)
・短期間の宿泊サービス:短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
・施設等での生活時に受けるサービス:介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)、介護医療院
・地域密着型サービス(地域に密着した小規模な施設等):認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型特定施設生活介護
・福祉用具を使用:福祉用具貸与、特定福祉用具販売

それぞれの具体的な内容については、以下のリンクを開いていただくと下図が示されますので、該当する施設やサービスのリンク先で確認できます。
⇒ 公表されている介護サービスについて | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)


以上の内容については、当シリーズの別記事で取り上げますので、その際にも確認して頂ければと思います。

一度認定を受けた後、その認定期間には有効期限があります。
・新規、変更申請:新規申込み認定後、変更申請を行う場合は、原則6ヶ月以内に行う必要があります(状態に応じ3~12ヶ月まで設定)
・更新申請:通常認定後は、原則12ヶ月間が有効期限です。(状態に応じ3~24ヶ月まで設定)
有効期間を経過すると介護サービスが利用できないので、有効期間満了までに認定の更新申請が必要となります。
なお、身体の状態に変化が生じたときは、有効期間の途中でも、要介護認定の変更の申請をすることができます。

以上、今回記事は、ほぼ厚生労働省のHPの内容と資料を参考に用いました。
この機会に、以下のリンクで、一層掘り下げて、詳しい内容を見て頂ければと思います。

介護保険とは | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
公表されている介護サービスについて | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
最初にお読みください | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)
介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)

前回の「介護保険法」を受けて、この法律で制定している介護サービスを受けるための必要手続きや受けることができるサービスについて基本的な枠組みを、今回確認しました。
今回の内容も、介護離職に直結するものではないかもしれませんが、これらの内容を知ることで、家族や自身の介護について考える備えの一端に触れることができたと思います。

次回は、第2章の第3項「在宅看護、介護保険外サービスとその他の支援制度の利用可能性」を取り上げます。

前の記事に戻ります:介護保険制度とは?:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー4
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