
介護保険制度とは?:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー4
「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」というテーマで、介護離職しないための考察と提案を展開するシリーズを始めています。
3回シリーズとした「第1章 介護離職とは? 介護離職の定義と現状を知ろう」に続いて、「第2章 介護保険法とは」に入ります。

第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止:2-1 介護保険制度の仕組みと利用条件
1)介護保険制度とは
介護保険制度は、高齢者や特定の疾患にかかった人々が必要な介護サービスを受けるための公的な保険制度です。
1997年制定、2000年4月から施行され、市区町村(=保険者)が制度を運営しています。
・介護保険被保険者:・介護保険被保険者は、40歳以上の人は、介護保険の被保険者となります。・40~64歳までの医療保険に加入している人(第2号被保険者)
・財源と運営:介護保険制度の財源は、被保険者が支払う保険料と国・地方自治体からの公費負担で構成されています。被保険者の年齢や収入によって保険料が異なるため、公平な負担が求められています。
・サービスの種類:介護保険制度では、施設サービス、居宅サービス、地域密着型サービス、予防サービスなどが提供されています。これにより、利用者は自分の状態や希望に応じたサービスを選ぶことができます。
・介護保険法:介護保険制度は、「介護保険法」によって規定されており、最新の改正日は2024年4月1日です。
その詳細は介護保険法のリンクで確認できます。
<参考>:介護保険法:目次
第一章 総則(第一条―第八条の二)・
第二章 被保険者(第九条―第十三条)
第三章 介護認定審査会(第十四条―第十七条)
第四章 保険給付
第一節 通則(第十八条―第二十六条)
第二節 認定(第二十七条―第三十九条)
第三節 介護給付(第四十条―第五十一条の四)
第四節 予防給付(第五十二条―第六十一条の四)
第五節 市町村特別給付(第六十二条)
第六節 保険給付の制限等(第六十三条―第六十九条)
第五章 介護支援専門員並びに事業者及び施設
第一節 介護支援専門員
第一款 登録等(第六十九条の二―第六十九条の十)
第二款 登録試験問題作成機関の登録、指定試験実施機関及び指定研修実施機関の指定等(第六十九条の十一―第六十九条の三十三)
第三款 義務等(第六十九条の三十四―第六十九条の三十九)
第二節 指定居宅サービス事業者(第七十条―第七十八条)
第三節 指定地域密着型サービス事業者(第七十八条の二―第七十八条の十七)
第四節 指定居宅介護支援事業者(第七十九条―第八十五条)
第五節 介護保険施設
第一款 指定介護老人福祉施設(第八十六条―第九十三条)
第二款 介護老人保健施設(第九十四条―第百六条)
第三款 介護医療院(第百七条―第百十五条)
第六節 指定介護予防サービス事業者(第百十五条の二―第百十五条の十一)
第七節 指定地域密着型介護予防サービス事業者(第百十五条の十二―第百十五条の二十一)
第八節 指定介護予防支援事業者(第百十五条の二十二―第百十五条の三十一)
第九節 業務管理体制の整備(第百十五条の三十二―第百十五条の三十四)
第十節 介護サービス情報の公表(第百十五条の三十五―第百十五条の四十四)
第十一節 介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等(第百十五条の四十四の二)
第六章 地域支援事業等(第百十五条の四十五―第百十五条の四十九)
第七章 介護保険事業計画(第百十六条―第百二十条の二)
第八章 費用等
第一節 費用の負担(第百二十一条―第百四十六条)
第二節 財政安定化基金等(第百四十七条―第百四十九条)
第三節 医療保険者の納付金(第百五十条―第百五十九条)
第九章 社会保険診療報酬支払基金の介護保険関係業務(第百六十条―第百七十五条)
第十章 国民健康保険団体連合会の介護保険事業関係業務(第百七十六条―第百七十八条)
第十一章 介護給付費等審査委員会(第百七十九条―第百八十二条)
第十二章 審査請求(第百八十三条―第百九十六条)
第十三章 雑則(第百九十七条―第二百四条)
第十四章 罰則(第二百五条―第二百十五条)
附則
・要支援サービスの自治体総合事業化
なお、上記介護保険法の<第4章保険給付>にある、要支援者に対するサービスである「予防給付」のうち、介護予防訪問介護と介護予防通所介護が、令和27年2015年4月から介護予防・日常生活支援総合事業に移行され、市町村の事業とされています。
総合事業には、従前の介護予防訪問介護と介護予防通所介護から移行し、要支援者と基本チェックリストで支援が必要と判断された方(事業対象者)に対して必要な支援を行う事業(サービス事業)と、65歳以上の方に対して体操教室等の介護予防を行う事業(一般介護予防事業)があります。
2)介護保険サービスの対象者等
介護保険サービスを利用者できるのは、次の被保険者です。
①<40歳~64歳までの人>(第2号被保険者):初老期の認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる病気(※特定疾病)により、要介護状態や要支援状態になった場合。

②<65歳以上の人>(第1号被保険者):寝たきりや認知症などにより、介護を必要とする状態(要介護状態)になったり、家事や身じたく等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)になった場合。

3)介護保険制度の利用条件
介護保険を利用するには、以下の条件を満たす必要があります。
① 被保険者の種類と年齢条件
・65歳以上の第1号被保険者: 基本的に全員が対象で、要介護認定を受けた場合に介護サービスを利用できます。
・40歳から64歳までの第2号被保険者: 特定疾病(アルツハイマー病、脳血管疾患など)により要介護状態となった場合に対象となります。
② 要介護・要支援認定
介護給付や予防給付のサービスを利用するには要介護(要支援)認定を受ける必要があります。
要介護度は、要支援1・2から要介護1~5までの7段階に分かれており、それぞれの要介護度に応じたサービスが提供されます。
4)介護保険料の仕組みと現状の課題
介護保険制度の運営に必要な資金は、被保険者が支払う保険料と、公費負担(国・地方自治体)から成り立っています。ここでは、保険料の仕組み、個人負担の現状、そして今後の課題について解説します。
① 介護保険料の仕組み
介護保険料は、基本的に被保険者の年齢と所得に基づいて以下のようになっています。
・第1号被保険者(65歳以上):
介護保険料は市区町村ごとに設定され、所得に応じて複数の区分に分けられます。
実際の負担額は自治体によって異なり、低い自治体では月額約3,000円程度、高い自治体では月額約7,000円程度となっています。
年金からの天引きが主な徴収方法で、年金額が一定額以下の場合は口座振替などでの支払いも可能です。
因みに、私の今年度令和6年度の介護保険料は、年額69,760円、平均月額5,813円、妻は54,720円、同4,560円、夫婦合計124,480円、同10,373円になっています。この金額が、年金から差し引かれるわけです。
・第2号被保険者(40歳から64歳):
医療保険と一体化されているため、健康保険料の一部として徴収されます。給与からの天引きが基本です。
② 個人自己負担の現状
介護保険の利用者は、保険料に加えて、介護サービスの利用時に自己負担分を支払う必要があります。
自己負担額は原則として通常は1割ですが、所得や資産に応じて2割または3割に引き上げられます。
この自己負担割合の引き上げは、保険制度改定時ごとに引き上げられる傾向にあり、介護費用の増加に対応するための措置として実施されています。
③ 今後の課題:
今年度、団塊世代が全員後期高齢者になる等、日本の超高齢化が急速に進む中、介護保険制度の維持にはいくつかの課題があります。
・保険料の負担増大:高齢化に伴う介護サービス利用者の増加により、介護保険の支出は増加傾向にあります。このため、保険料の引き上げや自己負担割合の変更が議論され、実際個人の負担が増え続けています。特に第2号被保険者の保険料負担が問題視されており、今後さらなる負担増が懸念されています。
・財政問題:介護保険制度の財源確保は重要な課題とされています。公費負担が大きくなる中で、財政的な持続可能性が問われています。これに対処するためには、制度改革や効率的なサービス提供が必要とされていますが、実際は利用者にとっては改悪以外のなにものでもありません。
・介護人材の不足:高齢化は少子化とも一体のものであり、少子化は労働人口の減少と直接に繋がっています。
また介護職員に賃金は、他産業・業種・職種の賃金に比べて低く、かつ介護現場の労働の厳しさもあって、介護人材の不足は慢性的になっています。介護施設の利用に困難な状況を招く要因となり、介護離職の遠因となる可能性もあるわけです。
介護離職をなんとか防ぐためには、まず「介護保険法」をしっかり理解することから。
介護保険法には、介護サービスを利用する上で知っておくべき事項が組み込まれています。
法律の条文をそのまま読んでも、なかなか理解できない、理解しづらいもの。
次回以降、この第2章で取り上げる内容を何度も確認していって頂きたいと思います。
次回は、介護保険制度において重要な位置を占める要介護・要支援の認定に関する「介護保険申請の手順と必要書類」を取り上げます。
なお、第2章は、次の構成を予定しています。
第2章 介護保険制度、保険外制度の活用と介護離職防止
2-1: 介護保険制度の基本情報と手続き
2-2: 要介護度認定と介護サービスの違い
2-3: 在宅看護、介護保険外サービスとその他の支援制度の利用可能性
2-4: 介護にかかる費用と負担軽減の方法

【参考:介護保険制度関連法律・法規リスト】
・老人福祉法 ![]() | ◆昭和38年07月11日 | 法律第133号 |
・老人福祉法施行令 ![]() | ◆昭和38年07月11日 | 政令第247号 |
・老人福祉法施行規則 ![]() | ◆昭和38年07月11日 | 厚生省令第28号 |
・養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 ![]() | ◆昭和41年07月01日 | 厚生省令第19号 |
・特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 ![]() | ◆平成11年03月31日 | 厚生省令第46号 |
・老人福祉法第二十八条の三に規定する業務を行う者 ![]() | ◆平成02年09月11日 | 厚生省告示第169号 |
・老人福祉法第十条の四第二項の規定に基づく日常生活上の便宜を図るための用具の種目 ![]() | ◆平成05年04月01日 | 厚生省告示第101号 |
・厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置 ![]() | ◆平成18年03月31日 | 厚生労働省告示第266号 |
・厚生労働大臣が定める感染症又は食中毒の発生が疑われる際の対処等に関する手順 ![]() | ◆平成18年03月31日 | 厚生労働省告示第268号 |
・介護保険法 ![]() | ◆平成09年12月17日 | 法律第123号 |
・介護保険法施行令 ![]() | ◆平成10年12月24日 | 政令第412号 |
・介護保険法施行規則 ![]() | ◆平成11年03月31日 | 厚生省令第36号 |
・要介護認定等に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等に関する省令 ![]() | ◆平成11年04月30日 | 厚生省令第58号 |
・厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目 ![]() | ◆平成11年03月31日 | 厚生省告示第93号 |
・介護保険法施行令第四条第二項に規定する厚生労働大臣が定める看護師その他の従業者の員数及び厚生労働大臣が定める看護の体制その他の看護に関する基準に適合する病床等 ![]() | ◆平成11年03月31日 | 厚生省告示第98号 |
・要介護認定等基準時間の推計の方法 ![]() | ◆平成12年03月24日 | 厚生省告示第91号 |
・介護保険法施行法 ![]() | ◆平成09年12月17日 | 法律第124号 |
・介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令 ![]() | ◆平成10年12月24日 | 政令第413号 |
・地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令 ![]() | ◆平成30年03月22日 | 政令第55号 |
・指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 ![]() | ◆平成11年03月31日 | 厚生省令第37号 |
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