
介護される世代、介護する世代の望ましい関係:2020年の介護離職事情を振り返る
「介護される世代、介護する世代の望ましい関係」とは、2020年1月6日に、他サイトに掲載した記事のタイトルです。(今回活用する2020年の3つの記事は、既に廃止したサイトに投稿のものを引用転載しています。)
今年2024年5月1日に開設した当サイト https://kaigoshukatsu.com。
初めに、2015年に要介護1でサービス付き高齢者住宅に入所し、途中要介護4になり特養に転所後100歳で亡くなった義母の介護および終活体験の回想を、やはり過去記事を集約する形で35回にわたって投稿しました。
この後、「介護離職」と「終活実践」の2つのテーマを並行して進めていく計画を持っており、今月から開始すべく準備しています。
介護離職問題は、今年2024年には団塊の世代全員が、後期高齢者になることから、3月4月とマスコミで取り上げられることが目立ちました。
その概要を取り上げて、新しいシリーズの序論とする予定ですが、それに先立って、廃止サイトの過去記事を序論の序としたいと考えました。
そのタイトルとして「介護される世代、介護する世代の望ましい関係」が望ましいと思い、冒頭の記事に据え、もう一つ、介護と仕事の両立問題の象徴としての介護離職問題を組み入れた、介護事業者の倒産関連レポートを紹介した記事を転載します。
以下、少し手を加え、コメントを少し書き加えています。

介護される世代、介護する世代の望ましい関係:2022年以降急増が予想される介護離職(2020年1月6日)
老老介護、多重介護、8050問題で象徴される単身中高齢者による老親介護。
これに、仕事を持つ現役世代が両親の介護で課題となる仕事と介護の両立課題と介護離職問題。
子育て・育児問題と並んで、家族間世代の関係のあり方、継承のあり方と繋がっている。
そして、団塊の世代が後期高齢者世代入りとなる2022年以降には、その課題が四半世紀にわたって継続することになるだろう。
その対策として、政治・行政が適切な政策を講じていく責任があるのは当然だ。
しかし、このところの議論は、「全世代型社会保障制度」への転換を掲げてはいるが、実際には要介護・要支援者の自己負担増、それによる現役世代負担増への不満感の抑制といった財政赤字対策と世代間負担格差対策という表層的なレベルにとどまっている。
仕事と介護両立の女性の半数以上は自営業という現実
ソフトブレーン・フィールドが2019年5月に行った「親の介護に関する調査報告」(対象:20~60代以上の女性830人)の結果。
両立経験の189人の介護時の就業形態は、
◆自営業やフリーランス 60.3%
◆パートタイム 36.5%
◆フルタイム 15.3%
元々自営業かフリーランスだったのか、介護が必要になったから自営業やフリーランスになったのか、レポートでは不明だが。
昨今、大手企業では、介護支援制度が拡充され、仕事と介護の両立が可能になる事例も増えつつあるかとは思うが、中小・零細企業に勤務している場合は、それも困難なことは十分想像できる。
ここからも、介護離職が、後期高齢者の急増に伴って、今後も増え続けることが予想される。
仕事と介護両立の自衛のためには、早くから、雇用される仕事ではなく、自営・フリーランスで生計と生涯設計を可能にする生き方・働き方をめざす。
それは自ずと介護離職の不安と課題を同時に軽減・解消させることにも繋がりうる。
女性・男性どちらの現役世代にも、早くからお奨めしたい方策だ。
※ こうした観点から、こちらのサイトを始めています。
⇒ https://fukugyokigyo.com/ みんなの副業起業.com
望ましい「世代継承」から考える先行世代の後期人生デザイン
自分を介護してくれる家族の仕事や人生・生き方をどう考えるか。
先行して生きてきた自分の残りの人生よりも、まだ先がある現役世代の子自身とその配偶者と子どもたちの家族の生活・人生を大切に思いやる気持ち。
先行世代が持つべき心持ち、優しさ、そして責任ではないかと私は考えている。
それは、自身の家族に対するだけでなく、次世代へと継承し、生を育んでいく社会や環境、社会システムすべてに対して持つべき精神であり、責務であるとも。
介護問題は、その中の最も身近な、自分自身に直接関わる課題だけに、より「自己」「自我」が主張される、悩ましいモノ、コトだ。
その背景や事情も、人、家族さまざま。
個人の課題と社会の課題。
個々に異なる事情を集めれば、多様性に至る。
そこから、さまざまな改善・解決策や知恵が生まれる人と社会が継承されることを願う者だ。
※以上2020年1月6日記事転載
世代間の課題に含まれる、個々人ごとに異なる諸事情がもたらす介護離職要素・要因の多様性
1947年~1949年生れである団塊の世代の全員が後期高齢者グループ入りするのが今年2024年。
団塊世代自身が、まだその親の介護を担っているケースもありうるわけですが、団塊世代ジュニアが団塊世代親の介護のために介護離職を余儀なくされることを問題視する。
数年前から想定されていた問題の再確認になるわけです。
介護する人の仕事、年齢、家族構成、経済事情、住居事情、健康状態、性格等々。
これに介護される人の介護・健康状況、経済事業、住宅事情、そして性格等々。
これらの掛け合わせにより、介護をめぐる当事者のそれぞれの事情や背景は、介護する人・される人の組み合わせの数と同じ種類あるわけです。
一般化しても、類型化しても、やはり同じように括って論じることはできません。
その前提で、介護離職問題を考える必要があるわけです。
予定している新しいシリーズでの課題の一つです。

変わらぬ「仕事と介護の両立」の困難さ。増える男性社員の介護離職(2020年/1月/13日記事)
介護事業倒産と並行して拡大する「介護離職」問題
前回、小規模介護事業所の経営の困難さを、東京商工リサーチの2019年の倒産件数調査から見た。
⇒ 厳しさが拡大する介護小規模事業所経営。2019年倒産件数過去最多
そこで指摘した、在宅介護政策は、介護事業者に影響するだけでなく、施設不足・介護人材不足など同じ要因から、介護者をもつ家族、とりわけ仕事に従事する人にも大きな影響を与える。
一応少しずつ整備されつつある介護休業制度だが、大企業などの一部に限定され、やはり継続して「介護離職」が本人にとっても企業にとっても大きな問題になっている。
「介護離職者」発生企業は1割
介護事業所倒産調査を行っている東京商工リサーチが、介護離職に関する企業調査をインターネットで2019年9月に実施。(有効回答6,545社。資本金1億円以上大企業、同未満中小企業・個人企業)
⇒ 第2回「介護離職」に関するアンケート調査
※以下、本稿掲載のグラフは、上記記事から借用転載している。
過去1年間(2018年9月~2019年8月)に介護離職者が「あった」企業が666社で構成比10.1%。
資本金1億円以上の大企業では、159社で同12.8%、1億円未満の中小企業では、507社同9.5%。
大企業の方が介護休業制度が整備拡充されていて、介護離職が少ないかな、と想像したのだが、逆の結果。
これは、雇用保険の受給と、中小企業よりも手厚い退職金で多少は離職後もしのげるのではという思惑が働いているから、と推察できるだろうか?

増える男性社員の介護離職
それは、これまでは一般的に女性の方が介護離職をする比率が高いとされていたものが、最近では、男性の方の離職者が増える傾向にあること、なかでも大企業にその傾向が強いことにも表れている気がする。
総務省2017年就業構造基本調査では、介護・看護のために過去1年間での前職離職者は、男性が2万4,000人で2012年比4,100人の増加。
女性は7万5,100人で6,100人減。
今回の同社の調査でも、資本金1億円以上大企業では、男性が約6割の77社(59.2%)。
1億円未満企業の、男性224社(同49.0%)とは10ポイントもの差。
大企業ほど男性の介護離職が多い結果となった。

介護離職防止への取り組みの現状と今後のあり方
働き方改革の課題の一つともされる「仕事と介護の両立」。
そのための介護休業支援制度法制の整備拡充が一応進められてはいる。
各社の取り組みで多かったのは、
◆「就業規則や介護休業・休暇利用をマニュアルなどで明文化」44,7%
◆「介護休業や介護休暇の周知、奨励」17.7%
◆ 「従業員の介護実態の把握」14.7%
◆「介護に関する悩みなどを相談できる体制」13.0%
法律に対応した取り組み自体まだ不十分だから、企業独自に進める制度としては、「在宅勤務制度の採用」「介護休業時の賃金の補填・補給」などは、ごく一部の大企業や先進的な企業に見られる程度。
人事労務面での人員体制の整備、そしてシステム作りなどは、まだまだこれからの課題とされている。
ということは、企業における介護離職防止対策でも、「特にない」企業が2,013社と約3割にのぼり、確実な手立てが見いだせない現状を示しているといえる。
進む社員の高齢化で危惧される介護離職増大リスク
当調査では、介護離職者の離職時の家族の状況、家族間・親子間の自身の立場、介護すべき家族の住居・資産・要介護状況などについての結果は示されていません。
例えば、企業に勤務する非婚・未婚単身中高年男性が、親を介護しなければならない状況に至った場合の介護離職も、今回の事例の中にもあるのではと推測できる。
こうした介護離職から、いずれ、親の年金と資産だけが生活資金になってしまった場合、いわゆる「8050問題」につながるわけだ。
企業が、社員の家族構成・事情をベースとして、短期・中期的に介護離職を想定すべきこととして、どのように介護離職対策をこれから打つべきか。
個人が、自身の家族構成・関係から、発生しうる介護離職リスクにどう備えるか。
そして、こうした拡大する介護離職問題の改善・解決のために、根本的にどのように介護政策・介護制度を転換・改革すべきか。
機会を改めて、考え、論じていきたい。
※以上2020年1月13日記事転載

「介護される世代、介護する世代の望ましい関係」も「仕事と介護の両立課題」も、個々人・個別事情によって異なることを前提に
「介護離職」は言うまでもなく、現状仕事をもつ方々が、親や配偶者、家族の介護のためにその仕事を辞めざるを得ないことで発生します。
その離職を防止するためには「仕事と介護の両立」を何としても可能にする必要があります。
しかしここで確認しておく必要があるのが、いかに「介護離職防止対策」として、政府や企業が法律や介護休業制度や付帯条件を整備・拡充しても、実際の活用・運用においては、個々人・個別事情のすべてに対応できるものではないということです。
初めに提示した「介護される世代、介護する世代の望ましい関係」という情緒的な表現においては、それが一層力をそがれることになるでしょう。
そういう厳しい認識を前提として、何とか新しい視点・観点で介護離職防止対策シリーズを展開していけないか。
現状まったく見通しが立っていないのですが、想いだけはぶれないように、プラン・構想を練り、柔軟に取り組んでいきたいと思います。
次回、シリーズの序論は、今年3月4月に新聞に掲載された介護離職問題に関する記事を整理し、新シリーズの展開構想に結びつけることができればと思っています。

なお、参考までに、冒頭過去記事で触れた前日記事を最後に添付しています。
(参考記事):厳しさが拡大する介護小規模事業所経営。2019年倒産件数過去最多(2020年1月12日投稿)
東京商工リサーチ調査:2019年老人福祉・介護事業倒産報告から

毎年定期的に報告されている東京商工リサーチによる同調査。
今年も厳しい結果が出た。
⇒ 2019年「老人福祉・介護事業」倒産状況
昨年の倒産件数は、4年連続ので100件台、2017年と同数の最多の111件。
特徴は、訪問介護58件、通所・短期入所介護32件で、資本金1千万円未満の小・零細規模事業者の倒産が合計98件と大半を占めていること。
(上記を含め本稿のグラフ・図表は、同社のHPから転用掲載させて頂いた。)
加えて、当然だが、従業員数が5人以下の零細事業が大半だ。
詳細は、リンクしたサイト記事で見て頂けるが、簡単に介護業界と介護サービス制度をめぐる大きな問題点を再確認しておきたい。

在宅介護政策と介護保険法の根本的な誤り
2000年に導入された介護保険法。
最大の特徴は、官から民への介護サービス事業の移行と手厚い介護サービス提供制度。
開始時には、中長期的な介護対象高齢者、必要な介護人材、そして介護コスト財源へ増加に対する危機感への認識が極めて薄かったのです。
そして、介護保険制度に保証された(ように見えた)介護事業収益システムや社会保障事業という心地よい響きを持った介護事業に参加しやすい小規模事業への参入をしやすくした政策。
その要素の決め手は、住み慣れた地域と自宅で介護を受けることができるという「在宅介護」を強く推進する政策だった。
そこでの介護サービスは、理想的とも言える「訪問介護」。
介護を家族に委ね、少しは、たまには負担を減らすために考えたのが、デイサービスという通所・短期入所事業。
小規模・少人数介護職員型施設で、補助金も出て、小資本で開業できる。
全国各地に雨後の筍のように、デイサービス施設が生まれた。
そして2010年代以降、予想を上回る介護人材不足。
劣悪な労働環境と待遇の改善に取り組む機運が高まってきてはいるが、この業界では、種々の対策が可能な大手企業と、一層厳しい経営環境にさらされる小規模・零細事業者との格差が 拡大する一方。
増加する一方の要支援・要介護高齢者。
にも拘らず、介護人材を確保できず、経営ノウハウの蓄積・活用も不可能。
甘かったといえばそうなのだが、もとを正せば介護行政の失敗に原因があると考えている。
働く介護職の方々のことを考えない「訪問介護」という仕事とサービス
自宅で介護してもらえる方としては安心で、便利。
しかし、もし自分が個々の家を訪ねて介護という仕事に携わるとしたら・・・。
どうだろう。
勝手知ったる家というわけではありませんし、家族・家庭の状況、家や部屋の状況もさまざま。
介護を必要とするレベルも内容も、本人の性格もさまざま。
働く人に合わせてもらえるのではなく、介護を受ける人に合わせた介護・介助サービスを、決められた時間内に行う必要がある。
個々の自宅を、ほとんど自分で車を運転して訪問しなければならない。
雨の日も、風が吹いても、雪が降っても・・・。
決してきれいごとでは済まない訪問介護という仕事。
その厳しさ、事によっては異常とも言える仕事について、
『介護ヘルパーはデリヘルじゃない 在宅の実態とハラスメント (幻冬舎新書)』という書で知ることができる。
こういう仕事をやりがいがある仕事として、介護職を選択し、従事する介護スタッフが果たして増える可能性があるか、応募する人がいるかどうか・・・。
制度設計し運用・監督する人、事業を始めてスタッフを募集する人。
あなたがこの仕事を積極的に選ぶだろうか?
在宅介護主義を体現したデイサービス(通所)介護事業への勘違い
介護保険制度で、収益が保証されているという勘違い。
事業規模が小さいから経営が比較的簡単では、という勘違い。
介護職も簡単に集まり、簡単にはやめないだろうという勘違い。
確かに社会貢献ができる事業には違いないし、需要も多いのも確かだ。
しかし経営はそう簡単なものではない、介護という仕事はなかなか長続きする仕事ではない。
そのうち、競合する事業所が近くに増え、資本力がある大手事業所には勝てなくなる。
倒産としてカウントされる以外に、現状も厳しい経営状態であり、倒産予備軍か、M&A予備軍と呼べる通所・短期入所介護事業所が、相当あるだろう。
いろいろ勘違いさせた介護保険制度、介護行政に責任あり。
在宅介護主義を掲げたゆえの介護保険制度が推進した、訪問介護と通所介護サービス。
問題課題が拡大するばかりの介護制度・行政、介護事業、介護という仕事・・・。
これから、継続して着目し、考えていきたいと思う。
※以上2020年1月12日記事転載
「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ:人気記事ベスト3
当サイトの主要シリーズの一つ、「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズがよく読まれています。
シリーズ中最もよく読まれている記事ランキングベスト3を以下挙げました。
第1位:介護離職の定義と現状を知ろう:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー1 – 介護終活.com
第2位:介護施設の種類と特徴、選び方のポイント:「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」ー9 – 介護終活.com
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