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介護施設の種類と特徴を正しく知る|後悔しない施設選びのチェックポイントとは?

「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズー9

「介護離職しないための8ステップ+1と実践法」シリーズ。
第1章第2章に続いて、今回から「第3章 介護施設・在宅介護の選択肢と介護離職防止」に入ります。
第3章は、次の5つのテーマで進めていきます。
3-1: 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント
3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係つくり
3-3: 在宅介護のメリットとデメリット
3-4: 自宅介護と施設介護の併用方法と費用見積り
3-5: 介護の場所の選択・方法の選択と介護離職防止対策

家族介護あるいは自分介護への備えを進めていくうえで初めに行っておくべき事。
前章の第2章で、介護保険制度について理解することを挙げました。
これに続く形で、介護をする場所である在宅介護と外部の介護施設について理解することがこの章の目的です。

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なお、本稿は、2024年8月4日に公開した記事を、一旦閉鎖し再開した当サイトに、本日再掲したものです。
当時の実態と現状では異なる内容が含まれていることがあり得ます。ご了承ください。
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それでは、第3章の第1項「3-1 介護施設の種類と特徴、選び方のポイント」から始めましょう。

介護施設には、厚生労働省が規定する基準に従って建設・設置された以下のように多様な施設があり、それぞれに規定された介護関連サービスが提供されています。

1)特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、常時介護が必要な高齢者を対象とする公的施設です。
要介護3以上の要介護度が入所の条件となっており、費用が比較的低く、手厚い介護サービスが提供されます。
しかし、施設数に対して入所希望者が多く、多くの地域で入所待ちとなっている問題があります。
現状、全国に約7,900施設あり、年間で約62万人が利用しています。
2)グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、認知症の高齢者が共同生活を送る施設で、小規模で家庭的な環境が特徴です。
専門的な認知症ケアが提供されますが、費用が高めで利用者が限定されることがあります。
全国には12,124施設あり、少人数制で運営されています。
3)有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業が運営する施設で、介護付き、住宅型、健康型の3種類があります。
設備やサービスが充実している一方、費用が高い点がデメリットです。
全国に13,525施設あり、利用者数は特別養護老人ホームに次いで多くなっています。
4)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、自立した生活を送りたい高齢者向けの住宅で、生活支援サービスが提供されます。自立した生活を続けながら支援を受けられる一方で、介護サービスは別途契約が必要です。
全国に5,000以上の施設があります。
5)介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設はリハビリを中心とした介護施設で、退院後のリハビリや短期入所が可能です。
長期入所は難しいですが、医療ケアが充実しています。
全国には3,000以上の施設があり、年間で多くの利用者がいます。
6)ショートステイ(短期入所生活介護)
ショートステイは短期間の介護が必要な高齢者を対象とする施設です。
一時的な入所が可能で、家族の介護負担を軽減するために利用されますが、短期間の利用に限られます。
全国に1,000以上の施設があります。
7)デイサービス(通所介護)
デイサービスは日中の介護サービスを提供する施設で、日帰りで利用できます。
日中のケアとリハビリを提供し、家族の負担を軽減しますが、夜間は自宅での介護が必要です。
全国に4,000以上の施設があります。
8)介護医療院
長期の医療と介護が必要な方が入所し、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア(緩和ケア)を受けることができます。2024年4月1日現在、全国に926施設あります。
(参考)介護医療院の開設状況について(厚生労働省資料)

まず、施設選びを始める前に情報収集を行いましょう。
インターネット、自治体の窓口、ケアマネージャーなどから情報を集め、リストを作成します。
その上で、以下の点を理解し、適切な施設を選びます。
前項とほぼ重複した内容がほとんどですが、チェックポイントとして確認して頂ければと思います。

1)特別養護老人ホーム(特養)
常時介護が必要で、費用を抑えたい場合に選びます。
但し、要介護3以上が入所の絶対条件で、資産や所得などに関しての付帯条件もあり、誰でも無条件に利用できる施設ではありません。
特養は費用が安く、手厚い介護サービスが受けられますが、希望者が施設数・収容者数に対して多く、入所待ちが長いことが問題です。
2)グループホーム (認知症対応型共同生活介護)
認知症のケアが必要で、家庭的な環境を求める場合に選びます。
グループホームは小規模でアットホームな環境が提供され、専門的な認知症ケアが受けられます。
3)有料老人ホーム
充実した設備とサービスを希望する場合に選びます。
有料老人ホームは施設のバリエーションが豊富で、設備やサービスが充実していますが、費用が高い点に注意が必要です。
4)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
自立した生活を送りたいが、生活支援サービスが必要な場合に選びます。
サ高住は自立した生活を続けながら支援を受けられるため、自立したい高齢者に適しています。
5)介護老人保健施設(老健)
退院後のリハビリや短期入所を希望する場合に選びます。
老健はリハビリに特化しており、医療ケアが充実していますが、長期入所は難しいです。
6)ショートステイ短期入所生活介護
短期間の介護が必要な場合に選びます。
ショートステイは一時的な介護が必要なときに利用され、家族の負担を軽減しますが、利用期間が限られます。
7)デイサービス (通所介護)
日中の介護が必要な場合に選びます。
デイサービスは日中のケアとリハビリを提供し、家族の負担を軽減しますが、夜間は自宅での介護が必要です。
8)介護医療院
長期の医療と介護が必要な方が入所し、日常的な医学管理や看取り・ターミナルケア(緩和ケア)を受けることができます。
病院や診療所が転換する例が多く、それだけにまだ施設数が少ないため、ニーズに十分こたえきれない状況といえます。

介護施設見学の際の注意点

施設の見学は、利用施設を決める上で必ず行うべきです。
取り寄せた資料や、自治体や厚生労働省のホームページ掲載の施設情報を用いて、見学先を決め、事前に見学の予約を取り、期間・時間に余裕を持って見学しましょう。
施設の雰囲気を観察し、スタッフの対応や入居者の表情を確認しましょう。
また、共用部分やトイレなどの清潔さをチェックすることも重要です。
居室や食堂、浴室などの設備を実際に見て確認してください。
可能であれば、入居者と直接話をして、施設の雰囲気やサービスの質について聞いてみましょう。
これ以外に、意外に見落としそうなこと、忘れそうなことがあります。
それは、施設を利用している人の数と介護サービスを担当しているスタッフの数です。
施設の収容規模に対して介護サービスを担当するスタッフが多いか、不足しているかも見た感じや、施設担当者への質問で確認してみてはと思います。
その他、施設へのアクセスの利便性、施設周辺の自然環境・商業環境などもチェックしておきたいものです。

利用施設の検討・決定に直接的な関係はありませんが、介護施設の特徴や利用に関する間接的な情報として、知っておいても良いと思われることを以下に付け加えておきたいと思います。

1)介護施設運営主体の種類

介護施設を運営する事業者形態としては、主に以下が挙げられます。
社会福祉法人などの公的施設
社会福祉法人は、公益性を重視した非営利の法人で、主に特別養護老人ホームなどを運営しています。公的支援があり、費用が低く抑えられている点が特徴です。
現状、全国には約20,670の社会福祉法人が存在し、そのうち、高齢関係事業を主に行っている法人は6,736法人です。
(参考)
・厚生労働省の統計情報:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service22/dl/gaikyo.pdf
・全国社会福祉協議会のウェブサイト:https://www.shakyo.or.jp
・社会福祉法人の現況報告書等の集約結果(2022年度):https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/zaihyou/zaihyoupub/aggregate_results.html
民間運営施設
民間企業が運営する施設には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。これらの施設は、設備やサービスが充実している一方で、費用が高い傾向があります。
病院経営施設
病院が運営する主な介護施設は、介護老人保健施設ですが、サ高住や有料老人ホームも経営している病院グループもあります。医療ケアが充実しているため、医療ニーズが高い利用者、医療・看護のサポート体制も一体化したサービスを求める人に適しています。

2)介護業界の構造

介護業界は、大手生保グループや介護専門大手によるチェーン事業者と中小零細事業者から構成されています。
大手企業には、ニチイ学館、ツクイ、ベネッセスタイルケア、SOMPOケア、損保ジャパン、第一生命、明治安田生命などがあります。これらの企業は、全国規模で事業を展開し、安定したサービスを提供しています。
一方、中小零細事業者は地域密着型で、個別のニーズに対応する柔軟性があります。

M&A動向
介護業界では、M&Aが活発に行われています。
2023年には日本M&Aセンターが多くの取引を支援し、2024年もさらに取引が増加すると予想されています。2023年の代表的な事例としては、日本生命によるニチイ学館の買収があります​。
(参考記事)
・ION Analyticsの記事: https://ionanalytics.com/homes-sweet-homes-japan-nursing-care-M&A-ramps-up-2025
・S&P Global Market Intelligenceの記事: https://www.spglobal.com/marketintelligence/en/news-insights/latest-news-headlines/japan-M&A-set-for-growth-in-2024
・Chambers and Partnersのガイド: https://practiceguides.chambers.com/global-practice-guides/corporate-M&A-2024/japan

倒産動向
近年、介護業界では倒産件数が増加傾向にあります。特に中小零細事業者は、経営資源の不足や人手不足が原因で経営難に陥ることが多いです。一方で、大手企業は経営基盤が強固であるため、安定した運営が続いています。最新の倒産動向については、以下を参照ください。
⇒ ”東京商工リサーチの最新調査報告”  https://www.tsr-net.co.jp/news/

今回は、いずれ行うことになる介護でそのうちのどれかを利用することになるでしょうから、介護施設の種類を知って頂き、どのような状況でどの施設を利用するのがよいか、利用すべきか、利用できそうかなどをイメージできるようになって頂くことに目的がありました。
知人・友人やそのご家族、ご近所のご家族の介護の話・情報を見聞きする機会も多分あると思います。
その情報と今回の内容とが重なり合った部分もあるのではと思います。
その確認をしたり、今までに見聞きすることがなかった施設についての確認も行って頂ければと思います。
特に、これから機会がある介護で、この施設は費用面や介護サービス内容から利用できる、利用すべきだな、などシミュレーションをしてみることをお薦めします。

次回は、「3-2: 介護専門職の役割と選び方、関係づくり」で、介護サービスを実際に提供してくれる介護の専門職の方々の種類と役割、関係性について、基本的なことを理解したいと思います。

※ 前の記事に戻ります:
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